第19話 お見合い
「そう言えば、蝶々さんは彼氏がいないことでご両親からお見合いを勧められたことはありますか?」
「随分と不躾な問いね、あるけど」
「毎週同じ曜日同じ時間に放送しているドラマで「見合い」というワードとそれに関する知識を得まして」
「なるほど、そういうことだったのね」
ホットケーキに四角いバターと、皿に零れるほどのはちみつをたっぷりつけて口へと運ぶ蝶々は、苦い思い出に頭を押さえた。
「聞いたからには最後まで聞きなさい?」
「興味深そうですね、是非」
「私お見合いは嫌じゃないけど、結婚を前提にお見合いするからには本当の自分を相手にも知ってもらった方がいいと思って…」
「嫌な予感しかしませんが一応聞いてあげましょう。思って、どうしたんです?」
「AGEHAの格好――つまり男装してお見合いに行ったの」
無表情のまま噴き出したコスモスは、布巾で珈琲を拭き取りながら「失礼しました。続けてください」と話の続きを促した。
「まあなかなか受け入れてもらえないものね。こういうのは。見合い相手の妹さんとお母さまにはある意味好感触だったけど、見合い自体は白紙になったわ」
「ご両親は何と?」
「私の必死の抵抗だと思ったみたい。趣味で男装をしてるなんて微塵も思ってないわよ」
いつかありのままの私を好きになってくれる人が現れればお付き合いをしたり結婚を検討してみてもいいかななんて思うけど、そんな人はなかなか現れないし夢のまた夢みたいな話よね、と蝶々はホットケーキをたいらげた。
どこか諦めたような表情をする蝶々さんのことが意外でなりません。この
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