第18話 信号

「赤と青と黄色の解釈は私の星でも同じでしたよ」


「他にどんな色があるの?」



信号が青になり、蝶々は車を進めながら問う。



「青紫が飛んでいいよで、赤紫が飛んじゃだめ」


「あなたの星では車が空を飛ぶのね」


「ええ。あとは茶色はオートドライブで」


「うんうん」


「深緑はワープOK、黄土色はワープ不可」


「うんうん」



蝶々は次々と出て来る信号の色とその意味について、カルチャーショックを受けるのを通り越してもはや何かを考えることを放棄していた。ただただ相槌をうちながら、自分の知っている信号に従いながら安全運転を続ける。



「あと白は強制停止ビーム」


「ビームッ?」



本当に事故りそうだから、やめてと言いながら蝶々は一旦家の前に車を停める。荷物を運び入れて車をレンタカー屋に返さなくてはならない。



「コスモスはそっち持って」


「私一人で運べますよ?」


「こんな大きなものを一人で一度に持っていたら、怪しまれるわよ」


「それは困りますね。ではこちらを…」



 二人で協力しながら家具をひとつずつ運び終えると、再び車に乗り込んだ。少し離れた場所にあるレンタカー屋までやって来ると、右折し誘導に従って駐車場に車を停めた。



「それにしても信号の色、めっちゃあるのね」


「ええ。自動車免許で信号機の色とその意味を覚えるのが最難関と感じる人は多いです」



家具を部屋へ運び入れる作業中も、まるでしりとりでもしているような感覚でコスモスは延々と信号の色とその意味について蝶々に話していた。

 もういくつの信号の色があるのかも蝶々はわからなくなっていた。



「私なら覚えられないわね。コスモスは覚えているみたいだけど、免許は?」


「いえ…」


「あら意外ね。どうして?」


「…」


「コスモス…?」


「…ピアノや車の運転など、両手両足を同時に動かして何かをするのが苦手なんです」



 器用なコスモスの、意外な一面を見れた気がする。

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