第17話 この気持ちは――

 帰り道、レンタカーの運転席に座る蝶々さんにそう問われて困ってしまう。基本的に自室を使うのは就寝時か着替え時のみ。リビングに行けばソファはありますが、そこにゆっくり座るというのは性に合わない。一分一秒でも長く彼女のために何かしていたい。

 あの一人がけソファを見ていたのは、可愛らしい蝶々柄に目が留まっただけで――



「蝶々さんって子どもっぽいですよね」


「はあ?それどういう意味?家事出来ないイコール子どもって考え方は子どもに失礼よ?」



そうじゃないんですけどね、それに自分が家事出来ないことは認めちゃっていいんですね。

 人と買い物に行くとその人の素が出るのでは?と自星で知人が話しているのを聞いたことがある。もし今日の蝶々さんが素の蝶々さんだったのだとしたら…



「好きかもしれないです…」


「ん?、私が買おうとして置く場所がないってあなたが言ったあのドレッサーのこと?」


「ふふ、そうかもしれませんね」


「帰ったら家具の配置ね。ゲームみたいに指でスクロールして簡単に模様替え出来たらいいのに」



自分の持てる腕力ならそれも可能。しかしもう夕方に差し掛かっている。これで蝶々さんが帰ったらさっそく私の部屋を「模様替え♪」なんて軽い気持ちで言い出したら、模様替え=大掃除になることは目に見えています。

 舞った埃をこの時間から窓を開けて逃がすことは流石に気が引けた。だからあえて黙っておくことにしましょう。

 レンタカーの運転席では、お気に入りの音楽を流しながら信号待ちをしている蝶々さんの横顔。



「ところで蝶々さん」


「何かしら」


「この世界では信号機の色は三色だけなんですか?」


「あ、あなたの星では?」

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