第15話 蝶々さんはお人好し

「居候生活に役立てるためのスキルを爆発させるのは助かるしいいんだけど、もうここは貴方の家でもあるんだから、もう少し肩の力を抜いてもいいんじゃないかしら」



男装していないのに、普段はだめだめで可愛らしい蝶々さんがかっこよく見えてしまいました。

この方を居候先に選んだのはあくまで条件がよかったからに過ぎません。けれどまだ三日しか経っていないのにも関わらず、私は居候先をこの人の家にしてよかったと思っています。

過剰なお世話をすることで、無理矢理主人の生活力を低下させ私がいなければ生きていけないようにする。

寄生の仕方は違えど、これが居候型地球外生命体の本性。

それなのにこの人はそうしなくても私をここへ置いてくれた。

自身にも利益になるという理由だけでは、きっとこうして気を遣ってくれることはないでしょう。

自分の寿命を迎えるまでの限られた大切な時間を割いてまで、私のために買い物をしてくれたり私の自室を作ってくれたり…。

私が蝶々さんに抱くこの気持ちは──



「生まれて初めて赤カビを落とせた時のようなトキメキに近いですかね」


「待って、突然何の話?」



思わず乱切りニンジンをスプーンから落とした蝶々さん。こちらの話ですと誤魔化しながら、味の染み込んだお肉を口へ運んだ。

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