第3話 そんなことってある?③

いつもなら昼頃まで惰眠を貪り続けているのだが、味噌汁のいい匂いにつられて目を覚ます。


(隣の家からかしら)


むくりと体を起こすと、見慣れたシルエットが顔を近づけてきた。



「お目覚めですか」



いくつものゲームをインストールしている中で、最も好きなキャラクター(もとい最推し)に顔を覗き込まれた上にドアップでそんなこと言われりゃ…



「めっちゃいい夢ね。冷めないでほしいわ、二日くらい」



眼福だ。

伸ばした両手で覆った頬が動く。



「おや、こちらではなかったですか?。ではこちらに」



瞬きの間に、別のゲームの二推しに顔が変わっている。

夢から覚めないまま、二推しに勧められて味噌汁を飲む。

味、温度、食べてるって感じ…やけにリアルな夢ね。



「この後はどうされますか」



ツン7デレ3くらいの割合キャラだったはずの二推しは、イベントでも発生しているのかまるで執事のようなものの言い方だ。

まあ、一応便乗しておく。



「そうね、の準備があるから…夕方までもうひと眠りするわ」



「かしこまりました。お疲れのご様子ですので、家事は全て私が終わらせておきますね」



「ええ、頼んだわ」



美味しい朝食(夢)を食べ、夢の中でも再び眠るとは何事かと思いながらも、蝶々は意識を手放した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る