第4話 そんなことってある?④

次に目が覚めたのは夕方頃。

土曜日に設定している「最低でもこの時間に起きないとダメよ、蝶々」のアラームが鳴り響く。

穏やかな音楽でも、ずっと鳴り続けられると鬱陶しい。けたたましい音よりもこういったアラームの方が、瞬時に止めずに聞いてしまうから段々煩くなってきて自然と起きる気になるのだ。

僅かに朝食に食べた味噌汁(夢)の匂いが残っている気がするのは、最推しと二推しが出てくるという最高すぎる夢をまた見たいと思う自分の欲による幻想だとして、いつものように顔を洗いに洗面所へと向かう。

お湯が出るまで待つのが面倒で、目が覚めるからと誤魔化しながら冷水で顔を洗う。

次にお手洗いへ向かい扉を開ければ、トイレを一生懸命掃除する見知らぬイケメン(イケメン)がそこにはいた。



扉を閉めて気を取り直し、もう一度扉を開く。


(いるわ)


私の気配に振り返った人物は、流せるタイプのお掃除シートをジャーと流しながら微笑む。



「申し訳ありません。今掃除を終えたので、すぐに退きますね」



微笑みを返す人物に、ははは…と乾いた笑みを返しながら扉を閉める。

え、怖い怖い怖い。どこから入ってきたの?、窓に隙間とかなかったわよね?。


完全に扱いがG(かの有名な虫さん)である。


扉を開けて出てきた人物はごく自然に手を洗いに廊下を通って洗面所へと向かった。

その背中に意味もなく指をさす蝶々。あまりの恐怖に声が震えてしまう。



「あ、ああ…」


「あ?、〝あ〟がお好きなんですか?」


「あなたどっから入って来たのよおおぉぉぉおぉぉぉ」



近所迷惑極まりない叫び声を上げるが、それを聞いたご近所さんもあのかの有名な虫さんが出たのだろうと思うのであった。

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