第2話 そんなことってある?②
「あ、流れ星」
やけに光ったな。
しかも流れたか?、あの星。
そんなことをぼんやり考えながら、ベランダでマグカップに入れたワインに口をつける。
我ながらグラスぐらい用意出来なかったのかと思うが、積み重なった洗い物の山を見ると自分を赦したくなる。
(うん、今日も頑張った。きっとあれは明日の私にしか見えない何かだわ)
かなり強めに自分にそう思い込ませ、思考を星へと戻す。
願いごとをし忘れたことに思い至るが、もう遅いかと盛大なため息が出てしまう。
ポケットに入れていた携帯の通知音に秒速で反応し、画面をチェックする。
各ゲームの通知や数少ないリアル友達からの連絡なんかを確認してからスワイプして消す。
「よし、全てを後回しにしてまずはゲームしようかしら」
お仕事を終えたら、推し事をする。
これが私、
割と普通な気がする日常も、この破壊力のありすぎる名前(本名)のせいで、ひた隠しにせざるを得ない。
普段何をしていようがこの名前のせいで、「意外」と言われてしまうからだ。
〝野薔薇蝶々〟なる人物の日常を、大抵の人は大きなお屋敷でピアノの演奏を聴きながらお紅茶を嗜んでいるような現実味のないものだと想像している。
だからこそ推し活してるよ、なんて言うと「ピアノは?」「お屋敷は?」と驚かれてしまう。
ピアノは幼い頃に習っていたけど楽器には相当嫌われているし、綺麗めの普通のマンションに住んでいる。
勝手なイメージを構築される上に、勝手にギャップを感じ驚かれ何故か遠巻きにされる。
学習した私はプライベートなことを話すことは控えて、ミステリアス野薔薇として今の会社で上手くやっている。学生時代はそれでいらない苦労したから。
リアルな友達はいるから孤独ではなかったし、どうしても推しを誰かと共有して楽しみたいわけでもなかったので、プライベートなことについて語らないことに不便なことはなかった。
なかったのだが。
推し活とは別の私の
彼がここを訪れたのは、よりにもよってそんな貴重な日の朝。
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