第3話 転校生
小学校五年生のとき、ぼくの住んでいた街にこの
ぼくの住んでいたあたりには方言の軽い
当然――とは、コンプライアンス上、言っていけないのかも知れないが。
でも、よくある流れで、淳子はクラスのなかで浮き上がった。
淳子が一方的にしゃべりかけても、クラスの女の子たちはろくに返事をしない。女の子どうしのつきあいはぼくにはよくわからないが、きっと、返事をしようにも、淳子のしゃべりが勢いがよすぎてできなかった、という面もあったのだろうと思う。
どちらにしても、転校生いじめに発展するのは時間の問題、というパターンだった。
そんなタイミングで、ぼくの母親が大山淳子のお母さんと仲よくなった。
母親どうしは最初は保護者会とかで仲よくなったらしい。ぼくの母親も学校の「ママ友」集団のなかでは浮きがちな人だったので、転校生の母親とすぐに仲よくなったのかも知れない。それで家が近所だということが判明した。
そのお母さんが淳子をうちに連れてきた。それで、淳子とぼくは、近所の畑のなかを走り回り、近所の山まで行って走り回り、いっしょに木に登ったりして遊んだ。
いま思えば「自然が豊か」な環境だった。
そういう体力を使う遊びでは、ぼくは同級生の男の子たちにはかなわなかった。下手すると女の子にもかなわなかった。でも、都会育ちで体力のない淳子ならば、ぼくでもリードできた。そんなことで、ぼくは得意になっていた。
それで、翌日、学校に行ってみると、
「
ということになっていた。
それでぼくが淳子と距離を取ろうとしても、淳子は
「なんでよ? いいじゃん。堂々とつきあおうよ」
と言ってますます近づいてくる。
「おまえ、「つきあう」の意味、わかってる?」と問い詰めようかと思ったけど。
淳子は「わかってるよ。わかってるから堂々とつきあおうっていってるんじゃん!」とか答えそうで。
怖くて問い詰めることができなかった。
そのあと、ぼくと淳子は小学校を卒業して同じ中学校に行き、その中学校で成績が中ぐらいの生徒がたくさん進学する高校にいっしょに進学した。
しかし、高校一年生の夏休み、大山淳子は突然いなくなってしまった。
親の都合で、もともと住んでいた東京の家に帰ったという。
なあんだ、と思った。
でも、これで平穏な日々が戻って来る、と、ほっとしたのも事実だ。
小学校五年生以来の平穏な日々が。
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