第16話



 草食系吸血鬼との同棲?共同生活!それももう数ヶ月が過ぎようとしている日曜日。

二人で出かけることになった日曜の夕刻。

流石に日中の太陽の光は草食系吸血鬼には辛いようである。

草食系は光に強いと言っても、そこは吸血鬼。

日の当たる日中は蚊に変化してカーテンの裏側でじっとしている。


「陽が落ち始めたわ、さてと、出掛けるわよ」


「吸血鬼に戻っていいですか?」


「駄目よ、?、じゃなくて、人の姿に戻ってもいいか?って聞いてくれない?」


「でも私は吸血鬼ですから」


「いいの、街中で、私は吸血鬼です、なんて言っている奴なんていると思う?」


「思いません」


「だったら人に戻るって言って、?、吸血鬼が? 人に戻る? なんか話がややこしいわ」


「ややこしいです」


「あー、もう考えるのが面倒臭い! 出掛けるわよ」


 二人は近くの商店街を歩いているが、どうにもぎこちなさがある。

それもその筈である。

男が吸血鬼であることなどバレたりはしないが、その容貌である。

透き通るようなブルーアイ、ブロンドヘアー、身長180センチ、何よりも銀幕から飛び出して来たような容姿。

道行く人々の注目を浴びてしまうのは仕方ないことなのである。

堪らず恥ずかしくなって乙女は吸血鬼に声をかけてしまう、


「ちょっと、もうちょっと離れて歩いてくれませんか?」


「私は、この道を知らないから迷子になってしまいます」


「大丈夫、後からついて行ってあげるから」


「でも、どこへ行ったらいいのかも知りません」


「大丈夫、後ろから声を掛けてあげるから。そこ、そこの角を右に曲がって」


「右に? 了解、右に曲がりまーす」

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