第14話



 絆創膏を額に貼った吸血鬼が俯いたままトマトジュースを飲んでいる。


「御免なさい」


「洗濯物の事はもういい、食事の事も私が食事代を置いていなかったからしょうがない。掃除もできている。だから、もういい」


「でも、乙女、怒っている」


「だから、もういい」


「でも、怒ってる」


「怒ってない」


「怒ってない?」


「しつこいわね」


「済みませんでした」


「・・・・・・・・。」


「怒ってる?」


「本当に怒るわよ」


「・・・・・・・・。」


「何よ?」


「乙女、悩んでる」


「はぁー、私が?」


「私には解る」


「どう言う事なの?」


「吸血鬼には読心術があるから」


「あなたが言うと嘘っぽい」


「本当だよ、肉食系吸血鬼は人を襲うために読心術を使う。私達草食系は人を癒すために読心術を使う。人だけじゃなく動物達、草花にも」


「草花にも?」


「そう、もっと言えば、形あるもの全て。道端に転がっている石にも。形ある物全てに波動が存在する。波動は命の動き。全ての物に魂が存在し、波動を生み出している。それを悪いことにも使えるし、良いことにも使える。私達蚊族は命を癒すために波動を感じ、そして時には与える事もできる」


「何か難しいこと言って私を騙そうなんて思っているんじゃないでしょうね」


「彼の事は忘れた方がいい、彼は悪い奴だ。別れることができて良かったくらいだ」


「あなたに何が解ると言うのよ!」

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