第12話
部屋に戻ってみると。
あれ、草食系吸血鬼が居ない?
何処?
服の入った紙袋とコンビニ弁当の入った袋をドサリと落としてしまう。
「嘘・・・。」
乙女は大事なペットが居なくなったような気分である。
「何処よ」
狭い部屋だ。
隠れようがない。
ならば、何処へ。
来た時と同じように突然出て行ったのか?
そう思うと心配よりも怒りの方が先に立つ。
「冗談じゃないわよ、服だって買ってきてあげたのに、それにトマトジュースと、それにそれにミックスジュースだってあるんだから」
たった一度の出会いなのに、乙女は泣きそうになっている。
「許せない・・・。」
と呟いてしまう。
「あのー、御免なさい」
「え?」
「私ここです」
声のする方を見てみると、よーく見てみると、ベッドの上の乙女の枕の上に蚊が鎮座している。
「なんで? なんでまた、蚊、になったのよ!」
「あのですね、一人暮らしの女性の部屋に男がいたら、乙女に迷惑がかかるかもしれないと思って、蚊になってしまいました」
「馬鹿! びっくりさせないでよ」
「それで、ですか。許せないのは」
「うるさい!」
叫ぶように言うと
「さっさと受け取れ」
またもや乙女は叫ぶように言うと、服の入った紙袋を床から持ち上げ、枕に向かって力一杯投げつけた。
「痛て」
蚊が蚊の鳴くような声で言った。
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