第10話



 フレンチトースト、ポタージュスープ。

フレンチトーストは卵と牛乳を混ぜ、砂糖を少し加え、そこにパンを漬け込む。

あとはフライパンで焼くだけ。

バターなどあれば、焦げ付かないようにフライパンに溶かしておくと、なお一層香り高いフレンチトーストの出来上がりでございます。

さらに好みに応じてフルーツや生クリームなどのトッピングも楽しいでしょう。


 ポタージュスープはジャガイモをすり下ろし、冷蔵庫に人参もあったので、これも少しすり下ろして、あとは煮込むだけ。

塩で味を整えましょう。

バジルやパセリなど薬味があれば楽しい食事になるでしょう。

上からコーヒーフレッシュを垂らすのも美味しいですね。


 仕上げに、インスタントコーヒーでも良いですので、食後の団欒など宜しいかと。


 と言うことで、乙女は久しぶりにまともな朝食を食べ、満足そうに食後のコーヒーなどをたしなんでいる。


「ねぇ、吸血鬼さん。コウモリ族と蚊族がいるって言ってたわね」


「はい、あまり知られてはいないことですが、肉食系と草食系に分かれます」


「そう、なのね。聞かせて欲しいわ」


「はい、お話しいたします」


「ちょっと待った! その前に、変な注釈は入れないでちょうだい」


「はい、注釈なしで」


「話してみて」


「はい、コウモリ族は人間たちが知っている吸血鬼です。あなたの知っている吸血鬼です。奴らは人間の血を吸います。それ以外は何も吸いません。ただし、彼ら肉食系吸血鬼の好物に蚊があります。普通の蚊ではなく私たち蚊族で、人間の血を吸った蚊が好きです。蜜を吸った蚊も好きです。これは殆どの人が知らない事実です。好きなのは草食系吸血鬼の肉なのです。彼らは私たち草食系吸血鬼の天敵であることはお話しした通りですよね。それともう一つ、彼らは人の血を吸い尽くすことで人を死に至らせます。それどころか最後には魂まで吸い取ります。魂の抜けた肉体に、自分の意志を注入します。それは最早、人ではない事を意味します。彼らの道具であり、従順な僕であり、優れたものは家族のようになれますが、蚊族ではなく家族です。モスキートではなくファミリーです」


「あのね、注・釈・は・要らないの」


「私たち蚊族は、普段は鼻の蜜を吸って生きています。鼻?、いえ、フラワー。失礼、どうも注釈を入れないと喋りにくいです」


「それでも、要・ら・な・い・の」


「因みに私はトマトジュースが好きです。野菜ジュースも良いですが、純粋なトマトジュースが好きです。いえいえ、もちろんフルーツも好きですよ。特にミックスジュースなんか、そりゃもう、あんな美味しいものは飲んだことがないくらいです」


「・・・・・・・・。」


「・・・・・・・・。」


「続・け・て」


「時々、私たち草食系吸血鬼は人の血を吸います。体力が衰えた時などの精力剤的なものです。人と同じです、俺並ミンC や チオブタドリンク、レレイン、などなどです。因みに私の好きなドリンクは・・・。」


「脱線しないの」


「時々、蚊に血を吸われても、あまり痒くない時があると思います。それこそが私たち蚊族が吸った時なのです。私たちは血を恵んでいただくために、血を提供してくださった相手に、しっかりと配慮しているつもりです」


「時々、やたら痒くなる時があるけど?」


「済みません、私たちは草食系吸血鬼であって、蚊の専門家ではないのです。専門の門に口出すな、と言う諺がありますが、問いかける、には、口を入れなければ質問できないからです」


「もう、いいわ」

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