第9話


 太陽は動くもの。

太陽は登り、

そして沈んでいく。

沈んで見えなくなった太陽を

誰が太陽は無くなったと言えるだろうか。

太陽は別の世界に住む人々を照らしに行っただけの事だ。

そしてまた昇ってくる。


 朝日は既に天空の頂上に達しようとしている。


「私、お腹が空いてきたわ、あなたも何か食べる?」


「いえ、乙女さんの血を2滴もいただいたので、これ以上望むものなんてありません」


「あ、っそ。また血が欲しいなんて言わないでよ」


「美味しかった、です」


「血を褒めるな」


「済みませんが、私に朝食を作らせていただけませんでしょうか?」


「え、お料理ができるんですか?」


「はい、フランスにいた頃、レストランで働いていたものですから」


「何ば言いよっとですか?」


「失礼とは思いますが、冷蔵庫の中を見せていただきますね」


 乙女が止める間もなく草食系吸血鬼は、冷蔵庫へと歩いて行く。


「うん、栄養のバランスが偏っていますね。あと、外食? コンビニで買ってくる? あまり良くないですね」


「ほっといてください」


 と乙女は答えるが、まさにその通り、外食はお金がかかるし、家で作るには仕事で疲れ果て作る気もしない。


「冷凍食品がありますね、これも良くない。揚げ物ばかりです。あと、そう、ビタミンが足りていない」


「チェックするために冷蔵庫を覗いたんですか? 吸血鬼さん?」


 と言いながらも、その通りである。

果物や野菜、新鮮なものを食べた方が良いのは分かっているが、結局は半分くらい食べると、あとは冷蔵庫の中でお陀仏、である。


「よかった、牛乳と、卵、おお! ジャガイモね、そうね、メニューは決まりました」


「それは、それは、よかったでございますこと」

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