第4話



 朝はやって来る

全ての人々に平等にやって来る

良い行いをして来た人にも悪人にも

ただ

その光を感謝し受け取れる人に差があるだけで

そして吸血鬼にも光は訪れるものである。


彼女は思い出す。


昔の物語である。


子供の頃

映画で見たシーン

朝日が登り始める頃

もがき苦しみ死んでいく吸血鬼


吸血鬼?


朝日?もがき苦しみ?死んで行く?


「やだ! 嘘!」


彼女は重大なことに気づいた

朝が来る前に!


「棺桶よ! 棺桶を用意するのよ!」


お馬鹿は薬を飲んでも治らないものである。


いや、そんな薬は現存しないが。


独身の女性が住むワンルームマンションに棺桶などあるはずが無いのである。


彼女は吸血鬼に布団をかぶせ

その上に3日前に届いたアマゾンの品の入っていた段ボール箱を広げ

さらに美男子の顔の上に置く。


「朝日よ、お願い、この人(?)を焼かないで」


と呟きながら。


朝日が登り始めている、

希望の朝である、

希望、

その言葉だけは生きている限り失われない。


彼女は朝日に向かって祈り出す、


「神様、どうか私の願いが叶えられるなら、吸血鬼をお助けください」


彼女は初めてお祈りをした。


神に向かって、

昇る朝日に向かって、

両手を合わせ祈った。


彼女の家は代々の仏教徒である。


然し、

その前に、

神と吸血鬼は仲良しであったのか?


彼女にはどうでも良いことのようである。

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