第3話
さて、どうしたものかと思う。
目の前で、
と言うよりも自分のベッドを占領して美男子が倒れている。
このまま放っておくこともできない。
男が一人、
独身のうら若き乙女の小さな部屋の中で倒れているのだ。
「彼も独身なのかしら」
などと吸血鬼と人間の接点などある筈もないことに想いがよぎる。
草食系吸血鬼は呼吸はしているようだが、
ピクリとも動かない。
然し、
何故に日本に吸血鬼?
海外から流れ流れてやって来たのだろうか?
流れ流れてやって来たにしても、
どうして私の部屋に迷い込んだの?
蚊だから?
「やだ、もしかしてマラリア蚊?」
そんなどうでも良いことに思いが馳せる、
お馬鹿である。
そう言えば草食系?
針の先で突いたくらいの血?
彼女は自分の指先を眺める。
そして裁縫箱を置いてある戸棚を眺める。
?・・・・・・・・。
「針の先で突いたくらいの・・・。」
彼女はそっと立ち上がり、
戸棚へと足を運んでいく。
裁縫箱を取り出すと、
暫く眺めていたが、
蓋を開けてみる。
針を出す。
「痛て」
彼女は細く白い指を、
うつ伏せに寝ている美男子系草食系吸血鬼の顔を、
もう一方の片手で支えて、
美男子系草食系吸血鬼の舌の上にそっと置いてみる。
ただし美男子系と言うのは彼女の心の声で、
男が言ったのは草食系吸血鬼だけである。
やはりお馬鹿である。
暫く男を寝かせておくことにした。
これから、
どうすれば良い?
男が起きてきたら、
また一雫の、
献血にも行ったことのないうら若き乙女の血を捧げるのか?
いや、
それよりも、
このまま死なれたら?
何処かへ埋めに行こうか?
ゾッとする。
吸血鬼の死体。
日本で見つかる。
犯人は街の片隅に住むうら若き乙女(独身)
「嫌だ」
彼女は声に出して言ってしまう。
いっそのこと、
もう一度この血を捧げた方がましだ、
この処女の血を、
・・・・・・・・・。
処女は嘘だ・・・・・・・・。
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