第2話



 蚊が喋るか?

と思うと未だ夢の中に居る自分を想像してみる。


真夜中に大声まで出してしまって

寒い夜に上半身を布団から出してしまい。


鼻梁に指先を当てると

軽く首を振り

もう一度布団に潜り込もうとすれば、


「あの、元の姿に戻った方が良いですか?」


と尋ねる声。


びっくりして今度は身体全てを布団から出し

飛び跳ねて起きるように足元へと素早く移動し

かけていた布団を蹴り

枕を隠そうとする。


すると枕の上の布団がむくむくと立ち上がり

天井へ届こうとするくらいの高さまでくると

被っていた布団を除けようと両手が出てくる。


「こんばんわ、驚かせるつもりはなかったのです」


と若い男が現れる。


彼女は

その姿に仰天してしまう。


髪はブロンド

目は透き通るようなブルーアイズ

身長は180センチくらいはあるだろうか

それよりも

その長い手足に腰を抜かしてしまいそうになる

それよりも

人の部屋に勝手に入り込んで何故タキシードを着ている?


「初めまして、私、吸血鬼です」


の声に・・・。

男の容姿に見惚れていた彼女であるが

こんな時に何を呑気に見惚れていたのだと

自分自身を取り戻し、


「わ、私の血を吸いに来たの?」


と震える声で問いかける。


「いいえ、血を吸うなんて。私は草食系の吸血鬼ですので血は吸いません」


「じゃあ、何をしに来たというのよ」


血を吸われないと思うと少しばかりの勇気が湧いてくる。


「ほんの少しだけ、血をお恵みしていただこうと思いまして」


「やっぱり血が必要なんじゃないの、一体どれだけの血を吸うつもりだったのよ」


「先程、見ていただいた通り、草食系の吸血鬼は蚊なので、ほんの少しです。ほんの少しだけで良いのです。最近、何も食べていないものですから。針で突いた程度の血、お願いできないでしょうか」


男はほとんど泣きそうになっているが、


「馬鹿なこと言わないで、誰が見ず知らずの人(?)に血を提供しなければならないのよ! この馬鹿! こう見えても私、献血にも行ったこともないのよ! 馬鹿、馬鹿、馬鹿!」


「やっぱり駄目ですか。そして、私、馬鹿ですか・・・。」


男は掠れるような声で言うと

そのままうつ伏せに倒れてしまった。

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