第11話 戦闘
なんと、話せるようになっている。これは幸い。お互い運命共同体と自覚させねば。恐らくこの状況、女神にとってはノーリスク。命の危険は俺だけにある。だがこの機会を逃せば、アニメ化発表された有名作品が鎮座する、推理文芸部門の日間一位はしばらく動かない。
転生の条件がそれなら、取引も出来る。
「これはチャンスよ。あいつを殺るわ。殺りなさい私の転生者」
女神からの意外な提案。状況を理解しているのか?
「だがどうしろと。見ろ、あいつコーヒーみたいなものを飲み始めたぞ。余裕というか、もう結果は見えていると言わんばかりだ」
聖女シルビアは魔法瓶のようなものから、黒い液体を注ぎカップを口につけている。凄く女子女子したお洒落なボトル系。舐めやがって。
人によっては「あのカップになりたい」などど戯言を抜かすであろう光景だ。無駄に耽美で美しい。
女神はそれを憎々しげに見て取り、
「転生ボーナス、全部あげるわ」
「マジか。どんなものがある。戦闘系だろうな。街づくりとかスローライフ系の能力は全く必要ないからな」
「分かっているわ。でも話せるように力を使ったから、たぶん長くは持たない」
なんと、じゃあ無言でボーナス寄越せよ。この女神、熱くなり過ぎて頭の回転がヤバい。俺も大概だが、そんなに無償でボーナスくれてやるのが嫌か。
「説明してたら日が上るわ。戦いながら覚えなさい」
「身体で覚えろときたか。得意分野だ。いいだろう見せてやる。俺の学習能力は笑いに特化しているが、いざとなったら女でも容赦はしない」
「その意気よ。あの小生意気な聖女を始末すれば、転生ボーナスでウハウハなんだから。きっちり片をつけなさい」
まるで反社な脅し文句。だが受け取ろう。
全力の転生ボーナスと共に!
音を立て振り返り、聖女シルビアに告げる。
「待たせたなくそ聖女!」
「せめて名前で呼んで。シルビーでいいから」
「やかましいシルビー! ちょっと可愛いからって図に乗るな!」
「乗ってないけどありがとう」
聖女シルビアはぺこりと頭を下げている。
なんの、事実を言ったまでのこと。
そうして続ける。
「もはや時は満ちた。よかろう、ならば決闘だ!」
「いいわ、かかって来なさい。全力でねじ伏せてあげる」
「上等、俺の戦闘描写見せてやる!」
「描かず戦え! 私の転生者!」
ぬいぐるみ女神の文句を皮切りに、二つの影が荒野から消え失せた。
速度で圧倒し、女神の背後を取るつもりが、
「遅いわ。そんな更新速度で、読者に読まれようという姿勢がそもそも間違いなのよ」
俺の背後から声が聴こえてきた。ふざけるな、一話書くのにどれだけ時間がかかると思っている! 人の苦労を愚弄しやがって!
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