第8話 ライトユーザーの逆襲

 ぬいぐるみな女神を手元に戻し、告げる。


「聖女よ、貴様名は」

「は? 知らないで来たの? やめてそういうの怖い」


 まるで怯える文言だが、聖女に怯えは見られない。さてはこいつ、大体分かった。


「名を名乗れ。これから殺す者の名ぐらい覚えておいてやる」

「何を言っているの……私は平和主義者。私を殺して一体どんな特があるの」

「転生ボーナスを受け取らねばならない。理由などどうでもいい。人気者め覚悟しろ。ライトユーザーの逆襲だ。読まれず埋もれていった作品達にあの世で詫びろ」


 理解出来ない言いがかり。かと思ったが聖女の顔つきが明確に変化した。


「転生、異世界転生者なのね、あなた。名前は」

「文章を碑とする者と書いて、日影文章。碑は日と書き換え、ヒカゲフミアキ。黄泉の手向けだ、震えて眠れ」

「起きたんだけど」

「見れば分かる。計算外過ぎてこの女神は後で廃棄処分だ。俺は何もしくじっていない。ジャンル別で日間一位にもなった」

「ごめんなさい分からない。それって凄いの?」

「……小説投稿サイト、文筆家になろう界隈ではそこそこ凄いかもしれないが、先日五百ポイントを切った。みんな読んだらブックマーク、しおりというかそれを外しやがる。評価も付けず」


 なんで評価を付けない。読んだんだよなあ。

 俺は読んだら評価は付ける!

 公式だって「応援評価」を推奨している!

 完結作品ならなおさら評価を残してゆけい!

 ただ読みしおって、いずれ無礼打ちにしてくれる!

 お前ら全員異端者だ! ライトユーザーを侮るな!

 

「そう、要するに大して読まれていない作品、ということね。可哀想」


 聖女が同情を寄せてきた。ふざけるなよ……デイリー七千PVはいったわ! ユニークは一日千五百人を超えたのだ!

 絶対読まれた方だふざけるな!


 こいつ、一話目投稿された段階で千ポイント稼ぐ作品並みに許しがたい。

 短編で万のポイントを稼ぐな!

 評価付けてるお前らどこの住人だ!

 匿名掲示板か!

 中身すかすかのネタ小説に万もポイント捧げやがって、蝕でも望むかこの匿名住民め! そんなに真っ白な鷲と狂戦士作品が好きか!


 そんなことになったら働き方改革どころじゃない。消費税アップや物価上昇どころじゃなく、生存競争率アップだ!

 よく分からない生き物との戦いに明け暮れろこの地球人め!

 二度と戻ってやらないからな!

 事実上常に戦争状態ヒャッハーだ!

 俺は転生して清々した! なんでこうなった!


 そもそも何チャンネルだ、本当にお前らか!

 誰が評価付けてるかカケヨメと違って確認出来ないから、貴様らの正体が掴めない!

 カケヨメはカケヨメで、SNSに寄りすぎだ!

 なんでもかんでも通知しおって。通知ない時寂しくて孤独過ぎるグルメサイトだ!

 サイトに金払わないからと勝手に低評価にするな! 偽レビューを書くな! 飲食店に迷惑をかけるなこの恥知らずめ!

 経営者と従業員の身になれ! コロナ禍で何件潰れた! 全部お前らのせいだ!


「つまり聖女よ、お前が悪い。全てお前の責任だ」

「なんだかよく分からないけど、大体分かったわ」

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