第18話 結界師に戻ってきてほしい side ゴウマン

「レティシア。何をバカなことを言っている?」


 無能結界師で裏切り者のアルク・バリアードを戻せだと……?

 この聖女、ついにイカれたか??


「バカなことじゃありません。アルクさんがいないと、帝都の結界がこのままでは崩壊しています」

「聖女のお前が結界をメンテナンスすればいい」

「できません! アルクさんの結界の術式は高度すぎて……とても私では理解できません。帝都全体を覆うほど広範囲で、魔王軍の侵入を防ぐほど強力な結界は誰もつくれません……」


 天下のオロカール帝国の聖女でありながら、結界師が作った結界も作れないとは、無能すぎる……

 聖女もクビにしてやりたい。


「あともうひとつ問題が……」

「なんだ?」

「アルクさんがやめてから、人間軍の物資が不足していまして……食料や装備が全部隊に行き渡らないのです。兵士たちに不満が溜まっています。脱走兵も増えていまして……」

 

 待遇の良い人間軍を退職するなどバカな奴らだ。

 

「アルクさんが物資の調達や装備の管理を一人でしていました。新しい将軍補佐のアホロン様は全然仕事ができずに現場は混乱しています」


 アホロン・オロカールは俺の弟だ。

 人間軍で仕事をしたいというから、将軍補佐に任命した。


「アホロンは俺の弟だ。あいつができないわけない。お前のサポートが足りないからじゃないのか?」

「いえ、アホロン様にはアルクさんの仕事を教えようとしましたが……毎日、帝都の飲み屋へ遊びに行ってしまいますので……」

「お前がちゃんと見張っていないからだ。弟を管理するのもお前の仕事だ」

「そんな理不尽な……! とにかくアルクさんがいないと人間軍が崩壊します。アルクさんを戻してください!」


 さっきからアルク、アルクと、あの無能結界師のことばかり……

 皇太子の俺が一度クビにした奴に戻ってきてほしいなど言えるか!


「アルクさんのクビを取り消して、なんとか頭を下げて戻ってきてもらわないといけません」

「こ、皇太子の俺が無能結界師に頭を……下げろだと?正気か?」

「アルクさんがいなければ、このままでは人間軍が危ういのです。ですからここはプライドを捨てて……」


 ありえない。ありえない。ありえない。

 俺が無能結果師に頭を下げるなんて、ありえない。


「ふざけるな! クビは絶対に取り消さん! お前がなんとかしろ!」

「殿下、いくらなんでも酷すぎます……アルクさんがいれば……」

「もう無能結界師の名前は聞きたくない! 出て行け!」


 レティシアは俺を蔑む目で見た後、謁見の間から出て行った。

 ……クソ! どいつもこいつもあの無能結界師を持ち上げやがって。




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