第17話 結界が弱くなってきたのだが side ゴウマン

「パーハラ将軍よ。エルフの村から逃げたというのは本当か?」


 俺は直属の部下、パーハラ将軍を部屋に呼び出した。

 俺の名前は、ゴウマン・オロカールだ。

 オロカール王国の王太子であり、人間軍の最高司令官だ。

 

「も、申し訳ありません……村に強力な結界が張ってあったものですから」

「結界だと? 結界なんて子どもでも使える初級魔法だぞ。貴様、まさか結界魔法のせいで撤退したのか?」

「いや、その……お言葉ですが、非常に強力な結界でして……王都の結界に匹敵するほど強くて」

「バカを言うな! 魔族がそれほど強い結界を使えるわけないだろ!」


 はあ……無能な部下を持つとストレスだ。

 こいつもさっさとクビにしたいぜ。


「実は……元人間軍の結界師、アルク・バリアードがエルフの村で結界を張っているのです」

「アルク・バリアード……あの無能結界師のことか?」


 アルク・バリアード——俺が1ヶ月前にクビにした無能結界師。

 結界魔法しか使えない魔術師の底辺、それが結界師だ。

 兵士として戦えないタダ飯喰らいだから、俺がクビにしてやった。我ながら英断だったぜ。


「バリアードの結界がある限り、我々はエルフどもの村を攻められないのです」

「言い訳はもういい!貴様が無能だということはよくわかった。貴様はクビだ!!」

「お、お願いです!クビは許してください!ゴウマン殿下、もう一度チャンスをください!」


 パーハラ将軍は土下座した。

 まったく愚かな生き物だ。

 無能結界師に負けるなど、あり得ない言い訳をしやがって。

 すぐにでもクビにしたいが、俺は慈悲深い。将来の王として弱者に寛容にならなければな。


「頭を上げろ。もう一度だけチャンスをやる。エルフの村をもう一度攻めろ。今度失敗したから、貴様はクビだ」

「有難き幸せです!」

「——ゴウマン殿下!王都に魔物が侵入しました!」


 王都の衛兵が駆け込んできた。

 最近、王都に魔物が侵入してくるようになった。

 今までこんなことなかったのに。


「またか……結界はどうした?」

「結界師がメンテナンスしていますが……王都全体をカバーするのは時間がかかっておりまして」

「無能な奴らだ。全員クビにして、もっと使える結界師を連れて来い」

「王都の選りすぐりの結界師を雇ったのですが……」


 この俺に反論するとは生意気なやつだ。

 俺を誰だと思っているつもりだ。


「お前もクビになりたいのか?」

「も、申し訳ありません!すぐにクビにします!」


 衛兵は犬のように逃げて行った。

 ふう。どいつもこいつも無能で困る。

 俺が有能すぎるからだろう。


「オロカール殿下……お話があります」


 今度は聖女のレティシアがやって来た。

 いつも俺に意見してくるウザイ女だ。聖女だからって調子に乗ってやがる。

 いつか、わかせてやらないとな。


「何の話だ?」

「アルクさんを……人間軍に戻したいのです」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る