第13話 英雄なんて大げさだし俺の柄がじゃない

 人間軍を撃退した後、村長の家で俺の歓迎会が開かれた。

 俺はそんなもの要らないと言ったけど、俺をきちんとテーベ村に迎えたいとのことだった。

 孤児だった俺は今まで誰からも歓迎などされたことがなかったから、どう振る舞っていいかわからない。


「……もしかして、楽しくないですか?」


俺の隣に座っていたエミリアが心配していた。

 エールを俺に注いでくれる。


「ごめん。そんなことないよ。ただこういう場になれていないだけだ」

「人間軍だと、歓迎会とかなかったんですか?」

「あったかな……」


 もちろん人間軍でも新兵の歓迎会はあるし、引退する兵士の送迎会もある。

 ただ俺が、そういう会に呼ばれていなかっただけだ。

 

「今日の主役はアルクさんなんですよ。この村を救ってくれた英雄なんです。もっと楽しんでください」


 エミリアはエールの盃を俺に渡した。

 俺は酒は強くないが、いわゆる≪英雄≫らしく、エールを一気に飲み干した。


「英雄だなんて大げさだよ。俺は自分を守るために結界を使っただけだ。ただの結界師にすぎない」

「まーた、そんなこと言って!アルクさんは自己評価が低くすぎです。アルクさんのおかげで命が救われたんです。もっと≪エルフの英雄≫らしくしてください!」


 エミリアはビシッと、人差し指を俺に突きつけた。

 頬が少し紅い。

 酔っているみたいだ。


 いつの間か≪エルフの英雄≫にされてしまったようだ。

 英雄なんて俺の柄じゃないのにな。


「実はお願いがあるんです。明日、ポーションを作るために薬草を取りに行くんですけど……その、あの」


エミリアは身体をもじもじさせている。 

 酔って気分でも悪いのか?


「あたしと一緒に行ってくれませんか?ふ、2人きりで……」

「いいよ。俺でよければ」

「ほ、本当に!ありがとうございます!あ、あ、どうしよう!」


 なぜか1人であたふたし始めるエミリア。

 よくわからないけど、かわいい子だなあ。

 


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