第11話 フルボッコなのに負けてないって言われても

「まさかガウスとムーノーがやられるとは……」


 人間軍の将軍、パーハラ・ジョーシが白馬に乗って前に出てきた。

 こいつとは面識がある。

 人間軍にいた時は、仕事が遅いだの、酒を注げなど、散々こき使われ罵倒された。

 部下には偉そうだが、オロカール国王とゴウマン王子にはペコペコする。

 上に弱く下に強い。典型的なクソ上司だった。


「アルク・バリアード。エルフの村に結界を張ったのはお前か?」

「そうだ」

「人間のくせに魔族を守るとは生きる価値もない屑だ。だが、お前は俺の元部下だ。お前に慈悲を与えよう」


 慈悲?

 まーた、わけのわからんこと言いやがって。


「慈悲とは何か?それは弱い者に対する憐れみことだ。アルク・バリアード。お前は弱い。結界魔法しか使えない無能だ。魔術師の底辺の底辺である結界師」


このオッサンには現実が見えてないらしい。

 底辺の結界魔法を破れないのに……


「あのー何をおっしゃりたいのか、よくわかりません。パーハラ将軍閣下」

「俺はお前に手を差し伸べているのだ。今、結界を解けば、俺の力で人間軍にまた戻してやろう。どうせお前のような無能結界師は、魔族に言いように利用されてボロ雑巾のごとく捨てられるだけだ」


俺をクビにしておいて、今更戻れだと?

 

「もう遅いですぅ!!」


 俺の隣にいたエミリアが叫んだ。


「話を聞いていたら、なんて理不尽な!自分たちからアルクさんをクビにしておいて、今更戻ってこいなんて有り得ませんっ!」

「な、なんだと!エルフの小娘が……」


 口調は相変わらず偉そうだが、エルミアの剣幕にパーハラ内心怯えているみたいだ。

 根は小心者だからな。


「みんなアルクさんが弱いとか無能とか、ひどいことばっかり言って!アルクさんは強いんです!あなたたち人間から私たちの村を結界で守ってくれてるんだから!無能なのはアルクさんの力を見抜けないあんたたちでしょ!!」


エルミアの天まで届きそうな怒号に、人間軍の奴らは身体を震わせた。

 俺を評価してくれる人がいるとは……人間軍ではあり得ないことだった。


「将軍閣下。俺は死んでも結界を解かない。この村は、俺が守る!」

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