第5話 エルフの村は女ばかり

「着きました!これがエルフの村、テーベ村です!」


 俺は強引にエルフの村―テーベ村に連れてこられた。

 オロカール王国軍の要塞から、だいたい徒歩で2時間ほどの距離だ。

 テーベ村はこじんまりとした小さな村だが、周囲には柵が張り巡らされている。

 この村は、位置的には魔族の領土内にある。

 エルフは人間でも魔族でもない。どちらにも属さない亜人だ。だからどちらからも狙われていた。人間や魔族の襲撃に備えて、警戒しているんだろう。


 人間の俺は、すでに魔族の領土にがっつり侵入してる状態だ。

 もしも魔王軍の兵士に見つかれば捕虜にされるか、殺されるに違いない。


「……女性ばっかりだな」


 どこを見渡しても、女性のエルフばかりだ。

 女性の甘い匂いが鼻腔をくすぐる……石鹸と化粧の匂いだ。

 エルフの寿命は人間より遥かに長い。人間の百歳がエルフの一歳に相当する。要するにエルフはなかなか歳をとらない。


「あ、そうです。エルフの男は、女の十分の一しか生まれませんから……女性はお嫌いですか?」

「別に嫌いじゃないけど」

 

 男より断然、女の子が大好きです。

 しっかし、エルフの男は生まれた時からハーレムってわけか。

 羨ましすぎるぜ。


「アルクさん、私の家に来てください!」

「本当にいいの? 俺なんかが家に行って?」

「はい……ぜひぜひ! 家でご馳走したいのです!」


 エルミアのテンションについて行くのは疲れるが、ものすごく腹が減っていたからありがたい。


◇◇◇


「この度は誠にありがとうございます。娘を助けていただきまして」


 この村の村長でエレミアのパパさん、マクロードさんが俺に深々と頭を下げた。

 黒い髭を蓄えた、物腰柔らかいな男だ。

 紳士的な印象だが、村長だけに声に威厳がある。


「いえいえ。当然のことをしただけですから」

「今日はぜひ当家で晩餐を愉しんでください」


 俺は村で一番立派な家に連れて来られた。

 丸太でしっかり組まれた大きなログハウス。隣に鳥小屋と厩がある。

 他のエルフの家にはなかったから、この村では裕福な家だ。

 エルミアはテーベ村の村長の娘だった。

 しかも、エルミアは7人姉妹の末っ子らしい。


「7人姉妹なんだね……お姉さんたちは?」


 村長さん、奥さん、7人の娘の9人家族のはずなのに、広い家には村長さんと奥さん、そしてエルミアの3人しかいない。


「お姉ちゃんたちは、みんな村から逃げ出しました……」


 エルミアは泣きそうな顔をした。

 村長さんも奥さんも、悲しそうにうつむいた。


「逃げたって……何かあったの?」


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