4 男らしくする

「あっおはよう」


「おはよ」

    

 電話では明るくて、駅で待ち合わせすることになっていたが雪はいつも通りツンツンしてる。

 

 周りに人が多くて居心地が悪そう。  

 

 こういうときは男らしく女性のことをリードしなきゃ。


「雪。手、繋がない?」


「私のこと子供だと思ってるでしょ」


「べ、別に?」


 子供っぽくて可愛いなって思ってたのなんでわかるんだ……。


「いいからもう行こ。こんなところ長く居たくない」


「だね」


「やっぱり子供だと思ってる」


「共感しただけなんだけどなぁ〜」


 電話してたときは明るかったのに、なんか今の雪はやけにツンツンしてる。


 心なしか少し歩くスピードも早い気がする。


 嫌なことでもあったのかな。あ、もしかして俺にリードされそうになって焦ってたりして。


「雅也。今日ってお昼ごはん一緒に食べれる?」


「あーうん。今日は午前で終わりだから、午後は暇だよ」


「そっ。じゃあいつものカフェで待ってる」


「雪も午前で終わりなの?」


「そう。だから二人でゆっくりしよ。昨日は……雅也に変なスイッチが入って出来なかったしさ」


「ははは……。午後が楽しみだなぁ〜!」


 わからせるのが変なスイッチだと思われてたのか。


 今日はゆっくりする時間を壊すようなことだけはしないでおこ。


 雪に本気で怒られたことは一度もないけど、怒ったら絶対怖そうだし。


 てか、いつのまにかまたリードされてるじゃん。

 流石イケメン。恐るべし。

 

「また変なこと考えてるでしょ」


「なんのことやら」


「一応言っておくけど、私のことをわからせるなんて出来ないよ」


「なぜに?」


「私ってそういう人間じゃないから」


「そんなふうに言われると、わからせたらどんなふうになるのか気になって逆に燃えちゃうんだよね」


「男って面倒くさい」


 雪がプイッと顔をそっぽに向けて、どんな表情をしてるのか見えなくなった。


 本当に面倒くさいって思ってたらまず話に乗ってこないはず。

 

 言動は相変わらずツンツンしてるけど、体が1ミリ以下のデレを隠しきれてない。

 さっきまで早足だったのに、今じゃいつもより数段遅く歩いている。

 

 あぁ。最近はイケメンで可愛げがないとか思ってたけど、やっぱ俺の彼女は最高に可愛い。


「そんなジロジロ見ないでくれる?」


「嫌だった?」


「嫌ってわけじゃないけど……。何も知らない周りの人が私たちのことを見たら、気持ち悪がられる」


「大丈夫。きっとカップルだって思われてるよ」


「そういうことを言ってるんじゃないんだけどなぁ」


「?」


「もういい。好きにすれば」


 そう言い捨てたときにチラッと見えた頬は、朱色に染まっていた。

  

 どうやら雪は俺の言葉に照れてるらしい。


 カップルに見られてるって当たり前のことを言っただけなんだけどな。


 イケメンが考えてることはよくわからない。


 俺たちはお互いの距離を伺い、出来立てホヤホヤのカップルみたいな空気で大学に向かった。

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ツンツンでイケメンな彼女をわからせる100の方法 でずな @Dezuna

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