第44話 さきの気になる相手

さきは、毎日を楽しく,仕事を日常を過ごしている

職場レクのボーリング大会のあとから同じ課の職員は勿論隣の課の職員からもお誘いがある。適度に付き合いながら仕事をこなしている

「さきはまだなの?」珍しく定時に帰宅した枝里子が呟く「今日は職場の方達と食事会だって」母久美子が答える「なーんだ。たまにはゆっくりおしゃべりしようと思ったのに」「いつも帰りが遅い枝里子が言ってもねぇ。」「まぁね。迎えに行こうかな。」「駅まで行けば?帰りに買い物してきて頂戴」「オッケー、」枝里子は母の買い物を先に済ませてさきを迎えに行くことにした

「さき―」枝里子はバス乗場に向かうさきに声をかけた「枝里子さん?どうしたの?お仕事中じゃないわね」「お帰り」「ただいま戻りましたぁ。今日は早く帰れたの?」「ウン定時でたま―に帰れる日があるのよ」「ゆっくりお茶でも飲む?」「家で良いよ。お風呂入りたいでしょう?」「そうねぇ。その後ゆっくりおしゃべりしましょう」枝里子は車を出した

「私の部屋においでよ。」「枝里子さんともっとゆっくり話す機会があると思ったけれど、意外になかったわね」「ごめんね。帰りが遅いから」「それはお仕事してるからしょうがないじゃない?」「ウン、まあね」「土日は私がアチコチ出掛けちゃってゆっくり出来なくてね。」「こっちにいる週末は私の式の準備で振り回してるし」「アレはアレで楽しんでるわ。おば様達と子供の頃の話とか聞かせてもらって。私って凄い生意気な子供だったらしいわ」「生意気?」「ええ。今聞けば口が達者な子供だったのよ。自分で怖くなるくらい。」「母さんがそう言ったの?」枝里子は怒っている「違うわ。」さきは慌てて否定する「おば様達はしっかりした子供だったって言ってたの」「そうだよ。さきは私のナイト様だったんだから」「ナイトって?」「いつも苛めっ子達から私を守ってくれたの。」「枝里子さんを?信じられない」「私も泣き虫だったし、恐がりだったのよ」

「子供の頃ってみんなそうよ」「さきは違ったの。私以外の子供達にだって優しかった。みんなのお姉さんみたいな感じだった」「そうなの?充分生意気な子供よね」「違うって❗弱い子の味方だったのよ。だからナイト様だったのよ。あの頃のアニメで流行ってたんだよ」「記憶にございません」枝里子は吹き出した「男の子達もさきが来ると意地悪やめたもの」「はぁ…恥ずかしいわ」「確かに口は達者だったと思う。男の子達はお母さんに叱られてる気がしたんじゃない?言い合ううちに戦意喪失してたもの。」「ますます恥ずかしいわ」「恥ずかしくなんかないわよ。何人か披露宴にきてくれるのよ?」「あらぁ私,出ない方が良いんじゃないかしら?」「どうして?みんな驚くけど喜ぶと思うよ?」「でも、突然園に来なくなって消えちゃったのよ?また突然現れたら好奇の目に晒されるわ。折角のお祝いの日にぶち壊しにならないかしら?」「さきでもぶち壊しなんて言葉使うんだ?」「そっち?まぁ最近ね。」と笑う「だからその前にみんなで会って食事会しない?」「食事会?」「保も集まって食事会しようって言ってたの」「保さんまで…二人も自分の事で忙しいのに私の事を気にかけてくれてありがとう」「ウウン。実は保が言い出したの。さきが子供の頃の記憶がない上に行方不明になったこと覚えてる人も少なくないはずだからって、全部を話さなくても大まかに話せることは前もって聞かせておいた方が当日さきが楽じゃないかって…」「ありがとう。必ず出席します。それとお式の方は清水の両親も主席させていただきますって電話があったわ。葉書も昨日で投函したそうよ」「わぁ嬉しいありがとうございます」「そうかぁ式の頃はさきはもう実家に帰ってるんだね」「ええでも、食事会は何処にいても参加するから。」「わかった。できるだけ実家に戻る前にみんなに会えるように手配するね」「ええお願いします」「そうだ出席予定の人の顔写真見てみる?」「写真て子供の頃の?」「どっちもあるよ。成人式の集合写真とかあるし、中学の同期会が2年前にあったから集合写真あるよ。」「是非、見たいわ。案外今職場にいたりして…」「いるかもよ。だって私達の同期って公務員普通にいるもの」枝里子はアルバムを引っ張り出した「これも片付けなくちゃねぇ…」「どうして?」「だって嫁に行くのよ?実家に荷物置きっぱなしは無いでしょ?」「あらおば様がそうおっしゃったの?」「イヤ、いつでも見られるように置いときなさいって。私一人っ子でしょう?家を出たら両親二人だけだし、改装して下宿屋さん始めようかとか言い出してるわ」「今時下宿屋さんは,どうでしょう?」「学生専門のアパートとかあるからね」「ああ成る程、それは良いわねぇ。元警官と元看護師が管理するのよ?地方から出てくる子供の親には強い味方じゃない?」「お向かいにはお医者様もいるしね。最高の条件だわ」枝里子は何冊かのアルバムを出して広げた。一緒に覗き込んでいたさきは、成人式の集合写真に気になる人物を発見したのだった。「この人…」「ああ中島君だね。何処で会った?」「隣の課に居たっぽい」「違うと思うよ」枝里子は即答「して?」「うーん、実は中島君、事故でね亡くなったの。」「事故で?」「ウン道をわたっているおばあちゃんを助けようとしてトラックに跳ねられちゃってさ」「似てる人がいるのよ」「弟君じゃないかな…」「そうなのね弟さんなの」「何かあった?」「この間、じっと顔を見ていて何か言いたそうだったのよ。でもなにも言われなくて。気のせいだったのかなぁ」

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