第43話 孝行

週末、さきは茨城の前野家を訪ねていた。今回はさきのみのお泊まりである。「真澄ちゃんを呼んでも良かったのよ?」のぞみが声をかける「真澄さんも予定があるらしいので…」「あら残念ねぇ」

「さきちゃんはどこか行きたいところはないの?」「特には…おば様と一緒にお出掛けできたら買い物でもドライブでも行きますよ?勿論運転します。希さんはいかがですか?」「私はねぇ、近所の友達と集まりがあって。お二人で行ってらっしゃいよ。」「久子おば様どうしますか?」「そうねぇ。いい天気だしドライブでも行きましょうか。」「では、ついでにお昼も済ませてきますね。」「助かるわ。私も戻りが3時4時頃だと思うから」「分かりました。」その日はさきの運転でショッピングとなった。

「もうこの歳になると欲しいものもなくてね、買い物をするのものぞみさんに任せちゃうのよ」「買わなくてもいいんですよ。いろいろなお店を覗くのもいい運動ですよ。車イスも手配しますね。貸し出しがあるので。」「そんなもの必要なの?」「郊外の大きいショッピングモールですからね。きっと1日で回れないですよ?」「あら本当に大きいスーパ~ねぇ」「ゆっくり見ましょうね」さきは入口付近で車イスを借り久子を乗せてゆっくり歩いた「思ったよりお客さん少ないのね?」「早い時間だと思いますよ,あと2時間もしたらいっぱいだと思います」「さきちゃんは何か見たいものあるの?」「靴が見たいです」「じゃあ靴屋さんへ行きましょう。」さきと久子はひとつめの靴店で可愛い子供の靴を見つける「可愛いわねぇ。私もさきちゃんに靴をプレゼントしたのよ」「まぁそうだったんですね。覚えてなくてごめんなさい。」「良いのよ。そんなつもりで言ったんじゃないわ。さきちゃんに似合うと思って買っておいたのよ。3人で遊びに着てくれたとき、さきちゃんが喜んですぐに履いてくれて…佐江子さんが子供ってすぐ大きくなるからいくつも買っても一緒に履けなくなるからプレゼントされると嬉しいですって言ってたなぁ」「ありがとうございました。」「こんな日が来るなんてねぇ。生きてて良かったわ。本当に」「久子おば様…」「紀夫は、高校生卒業の頃に両親を亡くしてね、寂しい想いをしたと思うのよ。」「ご病気だったんですか?」「両親は、農業してたの。つい無理しちゃって体を壊したのよ。母は父が倒れても一人で畑仕事をしてたんだけど腰を痛めて辞めたの。」「他にご兄弟は?」「二人きりの姉弟だったのよ。」「では畑は?」「父方の叔父に譲ったわ。今も農業してるわよ。もう子や孫に代替りしてるって。この間墓参りに行った時に聞いたわ。こんどさきちゃんも一緒に行きましょうね」「はい是非、連れていって下さい」さきは3件の靴店を廻ってやっとお気に入りの靴を購入できた「お腹が空きませんか?」「そうねぇ。朝食が早かったからお昼に混雑する前に済ませちゃいましょう」「何が食べたいですか?」「和食、洋食、中華いろいろですねぇ。迷っちゃう」「中華は、なかなか食する機会が無いのよ」「では中華料理店に入りましょう」店内はまだオープンしたばかりで客も少なく二人はゆっくり食事を済ませた

「美味しかったわぁ。さきちゃんご馳走さま」「どういたしまして、いつも泊めていただいてお世話になってますから…」「気にしないで良いのよ、さきちゃんの実家みたいなものなのよ」「はいありがとうございます。持ち帰りも注文してあるのでのぞみさんと正太郎さんにもお土産にします」「まぁありがとう」」「そう言えばさきちゃんってお付き合いしている人はいないの?」「いません」「まぁこんなにいいこなのに縁がなかったのかしら?」「イエ、私にその気がなくて」「どうして?お友達も皆結婚してるんじゃあ?」「そうですねぇ…まだ結婚している友人は少ないですよ。ただ、近々結婚する友人はいます。来年は多いと思います。ご祝儀が大変かも」「さきちゃんも頑張ってお相手を捜したら良いのよ」「そうですねぇ。急には、無理ですけどねぇ。」「もう既に現れているのかも。よぉく周りを見てみると良いわよ。」「そうですねぇ、帰ったら周りを見回してみます。でも急がなくても良いかとも思っているんです。」「今の年齢でしか付き合えない相手っていると思うのよ」「良い方と出会えると良いわねぇ」「はい、頑張ってみます。」二人はショッピングモールから帰宅するのだった

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