第39話 前野家の事情
その夜賑やかな夕食が済んで久子が寝入るまでさきと真澄は久子の部屋で過ごした。詳しくは話せないが久子の弟は絵本作家になるのが夢で実現したが事故に遭って亡くなっていたこと。さきの姉の沙江子がその妻であったこと。は軽く話した。
客間に布団を敷きながら「さき、大変だったんだね。」真澄はさきの過去を聞いて驚くだけだった「プライベートなことを話すのは、今まで誰にも言ってなかったのよ。」とさきは呟く「誰にも多かれ少なかれあるものじゃないの?わざわざ口にする必要は確かにないしね」「でもお陰で新しく親戚が増えてね。遊びに行く場所も増えたわ」「さきは立場的には直接の繋がりは無いんでしょう?親切な方達ね」「ええなくなった姉が私によく似ているんですって。だから親戚だと思って会いに来てねって言われいるの」「ありがたい話ね」「ええ本当にそう思うわぁ」「うちの身内は何だか他人みたいで苗字が一緒で顔が少し似てるだけ…」「充分親戚要素です(笑)」「交流がないのよこう親戚っていう温かみとか」「気付いてないだけじゃないの?」「嫌。無いよ。スッゴクサバサバしてるのよ。私は本当にこの一族で良いのかって思っちゃうくらい」「真澄ちゃんはさ,司法の道を目指してたんでしょ?」「うん。そう聞かされてきたし廻りもそうだったからそう言うもんだと思ってた。」「それならどうして気が変わったの?」「何の事件か覚えてないけれど悪い人は罪が軽くなっていい人だけど罪が重くなった事が続いて子供心に法律で人は救えないんだって思ったんだよ」「良い人だって罪を犯すことはある。仕方なく、故意に,偶然に、起きる事件もある起きないうちになにか出きるとしたら法務省だと思ったの。でもね人々によりそって考えるのは市役所や県の自治体だと思ったのよ」「凄いいっぱい考えたのねぇ」「チョッとふざけてない?」「そんなことはないわ。正直に感心してるの。私は学生時代からずっと探し物をしていてね。それが出きる仕事を選んだの。土日祝は休み,連続休暇が取りやすい仕事を」「公務員じゃなくても良かったんじゃあ?」「でも安定した収入がないと調べものができないでしょ」「はぁ…」「だから真澄ちゃんみたいに凄い志は持たずに就職したわ」「でも今は頑張ってるじゃない?」「ええ最近捜し物を見つけて一段落したところよ」「そうなんだ。最近変わったなぁって感じてたんだ」「そう?」「うんどこかスッキリした表情だよね?」「そうなの?」「自分では気付かないもんだよ」
結局布団に入ってもなかなか眠れず2時過ぎまで二人で語り合った
翌朝8時前リビングに顔を出した二人
「おはよう、ゆっくり眠れた?」「はいぐっすり眠っちゃいました」「良いのよ。まだ早いくらいよ。朝食の仕度もこれからよ」「手伝います。何をしましょうか?」「良いのよ。休んでて」「一宿一飯の恩義を果たせてください」「まぁ真澄ちゃん面白い言葉使うのね」「そうですかあ?」「じゃあパン焼いてくれる?」「はい何枚焼けば良いですか?一変に2枚出きるからお願いね。」「はい」真澄はそばにある食パンを4枚取り出しトースターに入れる「ン?」「何どおしたの?」「どこから入れるンですか」「ああこれ上から入れるの」「取り出すときは?」「焼けたら上がってくるから大丈夫よ」「初めてみた」「実物は私も初だわ」「ポップアップトースターって言うんだよ」大きなおくびを押さえて正太郎が声をかけてきた「おはようございます」「お早う朝から賑やかだね」「うるさくして済みません」「いやいや気にしないで。子供達が家にいるときはもっとうるさいからさ」「そうですか」ポンと音がしてパンが飛び上がった「わぁビックリしたぁ」「ホントにポンと上がるのね‼️」真澄とさきの驚き様に家人は微笑んだ「おもしろいでしょう?昔はこればっかりだったのよ?」のぞみが教えてくれた「そうなんですか、感心しちゃった。焦げずに焼けてるわぁ」「珍しいのね」「若い子は、知らないんだね」正太郎が呟いた「2枚いっぺんに焼けるのなら十分よ。ジャムいる?」とのぞみが声をかけた「そのままで」さきが答える「バターも塗らないの?」真澄が聞き返す「私はそのままで良いです」とさき「いつも何も塗らないの?」「そうですね。たまにチーズを挟むことはありますけど。殆どトーストしたそのままです」「渋いね」正太郎が微笑む「母さんもチーズを挟むんだ。牛乳を温めて」「そうね。健康面を考えてカルシウムとか気にしてるようね」「歳を取ると骨が脆くなるからって言ってるわぁ。検査では年相応だから心配は要らないって言われたんだけど」「久子おば様はお部屋で朝食を取るんですか?」「そろそろいらっしゃる筈よ?」「遅いね。様子を見てこようか?」「私が行きます」「私も」真澄とさきが久子を迎えに行くと廊下に腰掛けて庭を見つめる久子がいた「おば様?」「あらお早うさきちゃん、真澄ちゃん」「おはようございますおば様。どうしたんですか?お庭に何か?」「何も…庭が見たかっただけなの。」「お庭に花が咲いてますね。お手入れも行き届いていて…」「私の趣味だったの。最近はのぞみさんに任せっぱなしで。あの花トレニアって言うのよ。弟が好きな花でね」「弟さんって亡くなられた絵本作家の?」真澄が尋ねる「エエそうよ。この花は強いから姉さんでも枯らさないよって言ったのよ。失礼な奴でしょう?」久子はふっと笑った「おば様…」さきは久子のてを握る「大丈夫よ。時々思い出すの。あの子が私に言った憎まれ口を」「久子おば様元気だして。私が居ます。紀夫さんの代わりにはなれないけれど私が居ます。正太郎さんやのぞみさんも…」「ええ分かっているわ。大丈夫よ」「さき…」「よろしければ私も顔だしますよ?久子おば様」「ありがとう嬉しいわ。さきちゃん、真澄ちゃん」「さぁさ朝ご飯ですよ。正太郎さんやのぞみさんも待っています」賑やかな廊下の声が近づいてくる「お待たせしましたぁ」「お義母さんおはようございます」「お早うのぞみさん。正太郎」「賑やかで良いね。」「子供達が戻ってきたみたい」賑やかで華やか朝食が終わった。「のぞみさん、後でホームセンターに行きたいの。」「何か必要なら僕が買ってくるよ。母さん」「ありがとう。正太郎、私も行きたいの連れていってくれる?」「じゃあ3人で出掛けましょう?」「愉しそうね」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます