第35話 友人の温もり
翌日曜日、西寺夫妻の納骨の為に寺に向かった。前野家の3人も一緒に分骨して横浜の寺と西寺家の墓地へと納骨することになった。発見された時点で紀夫と佐江子の骨は重なっていたので一緒に弔うのが故人が希望するのではないだろうかとさきが申し出て両家が了承したのである。家族も高齢になるし分骨することでお互いが墓参しやすいだろうと、考えての事である。
「さきちゃんがそれで良いと言うなら私はそれで良いと思います。清水さんは、よろしいのですか?」紀夫の姉末子が尋ねた「もちろんです。紀夫さんも私達の家族です。佐江子も喜ぶと思います」父宏は笑顔で答える「私達もできるだけ西寺家の墓参りを欠かさない様にいたします」正太郎とのぞみ頷いた「お二人も私達の親戚ですのでよろしければなにかとご連絡が取れるお付き合いをさせていただくと嬉しいのですが」真理子はのぞみに手を伸ばす「もちろんです。喜んでお付き合いさせて頂きます。宜しくお願いします」真理子の手を取って微笑む
「うちは親戚が少ないので嬉しいですわ」真理子は末子の手を握りお互いの今後の末長い付き合いを確かめあった
「さきちゃんは僕のいとこなんだね。宜しくね」正太郎がさきに声を掛ける「こちらこそ正太郎お兄さん。家族共々宜しくお願いします」さきも礼をして応える
翌日職場のエレベータ前で
「おはようさき」「おはよう真澄さん」「何かスッキリしてるね?」「そう?いえそうかもしれない。片付くことがあったから。」「部屋の掃除でもしたの?大掃除には早いわよ?」「大掃除ねぇ。私は普段からこまめに片付ける方だからね。大掃除はしてないわ」「さきの部屋を見なくても机に上を見ればわかるわよ」「そうかしら?」「キチンと片付いてるもの。私とは大違いよ。」「私は不器用なのよ、だから片付けてからじゃないとどっちもうまく進まない気がするの」「同じだけどねぇ?そうだ、昼外行かない?」「良いわよ。じゃあ此処で待ち合わせね。予約入れとく」「お願いします。同じので良いよ?」「わかった」さきは5階で、先に降りていった「どこに行くのさ」「内緒。って言うか居たの?足立君には関係ないでしょ?」「俺も行きたい」「ダメ。二人で行きたいから」「同期だろう?」「ダメなものはダメです。じゃあ」真澄が6階で降りた。足立は8階である「振られたみたいね?」「山根さんおはようございます」「お早う。私で良ければ付き合うわよ?」「いえ、大丈夫です。また変な噂がたちますよ?」「あら誤解はちゃんと解いたわよ?無理やり結婚する必要も無くなったし。足立君にはちゃんと謝ってなかったから、機会をもうけたかったの。」「そんな気を遣って貰わなくても大丈夫です。」「私の気が済まないのよ」「そう言うとこが改善するとこじゃないかな。」「須藤さん?」「お早う。足立君、君も迷惑なら迷惑って言った方が良いよ?」「えっ」「須藤さん?どういう事よ。」「あのぅ。迷惑です」「えっ?」「ですから、僕に構わないでください。失礼します」足立は8階でやっと降りた「ちょっと足立君」「山根さんさぁ、自分の気が済んだら良いの?」「私は足立君には迷惑をかけたから謝りたかったのよ」「先方の気持ちを考えた謝罪ではないから断られるんだと思うよ」「須藤さんに何がわかるの?」「少なくとも君よりはわかると思うよ。」「失礼ね」「じゃあ僕はこれで」11階で須藤はおりていった「何よ何なのよ」一人残ったエレベータのなかで悩む山根であった「ランチのコースAで良かった?」「私は好き嫌い無いから大丈夫です」「うんでもね、チョット辛口かも…」「大丈夫辛いの平気よ?」「ランチの話しになって班長が今日のメニュー辛いやつだって話してたの。このメニューは、初めてって言ったらチョット辛いよって言われて気になって。」「心配性ね。さきは」「だって午後の仕事に支障きたしたら責任感じちゃうもの」「楽しみねぇ」二人は中華料理店の中に入った「こちらへどうぞ」店員の案内で二人がけの席に着いた。「すぐにお持ちします」予約してあるので食事がすぐに出来た「辛。でも美味しい」「本当ね。美味しいわぁ。ナイスよ。さき」「うんありがとう。良かったわ。」「さて朝の片付いたものは一体何だったのかな?」「覚えてたの?」「当たり前でしょう。だから離れた場所選んだのよ?」「えっ真澄さん。怖い」「足立が行きたがったのを断ったんだからね」「あらそうなの」「で、何があったのよ」「うん実はね、私の姉の事なの」「お姉さん?」「ええ。歳が離れていて、私には姉との記憶すらないの」「どれだけ離れているのよ。」「23歳」「へぇ。それで?」「ずっと行方不明だったの…家を出てずっと帰ってこなかったから」「その人が見つかったってことね」「うん。事故で亡くなってた。20年も前に…」「えっ。ちょっと深刻じゃないの。結婚して幸せに暮らしていたそうよ。」「でも最近わかったのは何で?」「事故で崖下に落ちたあと生き埋めになったらしいわ」「生き埋め?」「不法投棄で、土砂が上から落ちてきて助からないって思ったらしいわ。」「本当なの?」「私がこんな冗談言うと思う?」「思え,な,い」「事実よ。一緒に見つかった鞄にビニールにくるまれたノートに残っていたの」「さき…」「重い話よね?短時間で、話せることじゃないでしょ?」「う、うん。ふざけてごめん」「イイエ。良いのよ。でもね両親もほっとして居るの。ずっと探していたから多少の覚悟はしてたらしいの。」「勿論ショックは受けてたわよ。だから警察から遺骨の引き取りの連絡があったときも私は一緒に付いていったの。」「そう…さきは大変なのに一人で抱えてたのね」「プライベートなことを話すのもね。実際重たい話でしょう?」「うん。足立君連れてこないで良かったぁ。私グッジョブって誉めてやりたいわ」「真澄さんったら」さきは思わず笑ってしまった
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