第34話 家族への想い

そこへ父宏と西寺紀夫の姉の前野正太郎とのぞみそして前野末子が入って来た 「末子おば様、遠いところをありがとうございます。」「正太郎さんものぞみさんもありがとうございます。」「いいえ。紀夫叔父さんと佐江子叔母さんの供養だからね。さきちゃん元気かい?」「はい、お陰様で。皆さんも」「うん代わり無いよ。」「良かったです」「お母さんも最近、お散歩好きになっちゃって、私と買い物に行ってくれるのよ。」「元気にならないとさきちゃんに会いに行けないもの…」「それでね、私は車の免許を取ったの」「のぞみさん、免許取ったんですね。」「元々免許あったのよ。ただペーパーだったの。教習所で再度経験を積んで最近はどこへでも行けるのよ。今日だって此処まで私が運転してきたの」「まぁ…凄い」「だからね、車を買ってもらうの」「正太郎さん。太っ腹ですね」「母さんが半分出すんだって」「私の用事に使う方が多いもの。のぞみさんが病院へも連れていってくれるし、お買い物も遠出したりとか愉しいのよ」「病院だって僕が連れていくって行ってるんだけどねぇ」「正太郎は仕事の電話が掛かってくるから申し訳ないのよねぇ。」「良いんだよ。自分の会社なんだから」「でも公私は分けないとねぇ」「正太郎さんはお母さんが私と出掛けるのが悔しいんですよ。焼きもち焼いてるの」「お嫁さんとお母さんが仲が良いのは有り難いことですよ」「そうですよねぇ。」「うふふ」見ていて微笑ましい。「ところで、そちらの方は?」と宏がさきに声を掛ける「お父さん、彩子さん、足立さんの弟で、徹さんですよ」「彩子さんの弟さん?」「足立と申します。さきさんとは同僚でもあります」「同期の方なんです」「ほう。さきの同期か。さきの父です。」「宜しくお願いします」「今日はわざわざありがとうございます。」「いえ、姉が出席する予定なのですが急な仕事が入って間に合わない可能性があると言うので私が出席させて頂いたんです。ケーキ屋さんのお姉さんの事だと知っていれば率先して出席したはずです。僕は、いえ私達は姉弟は、あのケーキに救われたんです。ケーキ屋のケーキとあの女性の言葉に姉が変わったんです。捨て鉢になってた姉貴が急に優しくなったんです」「捨て鉢?」「ええ。うちは親子関係が複雑で姉は結構反発していて家出をした時に諭してくれたんです。幼かったけれど僕には分かります。あのお姉さんがうちの姉をなだめてくれたんです。僕にとっては恩人ですよ」「あら、随分なことを言ってくれるじゃないの。」「姉さん間に合ったんだな」「私が捨て鉢になってたなんて…」「本当の事だろう。」「徹。」「まぁまぁ彩子さん。西寺さんと姉のためにお焼香を」「あっそうね。徹覚えておきなさいよ」「姉貴が間に合ったんなら僕はこれで失礼します」「徹さん。これから食事会を」「いえ僕は急に来たので…」「大丈夫ですよ。是非あなたもご一緒にいらしてください。」「彩子さんお待ちしてましたよ」「お父さんが案内を?」「ああ是非知らせてほしいという事だったのでね」「そうなの。清水さんにメールで知らせて頂いたのよ」「彩子さんに会えるのが楽しみでねぇ。」「まぁ真理子さん、私もそうです。嬉しいわ。」

会食が始まる前に庭を眺めている彩子に

「随分と馴染んでいるんだな」徹は姉の意外な表情に驚く「あら徹。さっきのは…」「まだ言ってるのかぁ?」「いいえ。確かにあの時、家出した時ね、徹を残して一人で行くはずだったのよ。私は要らない子だったから…」「姉さん」「でも徹もいなくなったらあの人たちが慌てて面白いかとも思ったわ。」「そんなこと考えてたの?」「おじいちゃんとおばあちゃんには申し訳ないと思ったわ。でもね、好きに生きたら良いなんて12歳の娘にいうことじゃないわよ。あの人って…もう見捨てられたんだと思ったわ」「母さんは、そんなつもりじゃ…」「徹は跡取りだし、、お利口さんだったから、そんなこと考えなかったでしょう?でもね私の存在価値なんてゼロだったわ。」「バカな…」「母さん達の会話を聞いたのよ」「あの人はね、子供を二人産めば好きな研究者に戻れるって約束したの。おばあちゃんとね」「えっ?」「酷い話でしょう?だからね私と徹を産んで離乳が出来たらさっさと実家に預けて好きな研究に没頭してるのよ。今現在もね」「姉さん」「おばあちゃん達もそれで納得したのよ。同罪でしょう?」「そんなこと。きっと勘違いだよ。おばあちゃん達は違う事考えてたんじゃないかなぁ」「徹が傷付くと思ったから今まで話さなかったのよ。」「姉さん…」「おじいちゃん達には育ててもらった恩もあるから邪険にはしないわ。それに佐江子さんが、あなたがしたいのは自立なの?それとも、ただ迷惑をかける家出?ってね。それに格好いい大人の女になりたいなら守るものはしっかり守って。自立しなさいって…佐江子さんが教えてくれたの。自分は失敗したから。あなたは失敗しないでねって言ってたわ」「母さん達と話したことあるの?」「何のために?」「勘違いかもしれないじゃないか」「勘違いじゃないわよ。私達の入学式、卒業式。運動会来たことなんか無いじゃない?誕生日にすらプレゼントを送りつけるだけよ?私よりも徹はもっと小さいのに思いでなんて無いでしょう。愛情があるわけがないわよ。よく二人とも道をはずさずに大人になったと思うわよ。」「僕は物心付いたときから姉さんやおばあちゃんとおじいちゃんに構って貰ったから寂しいとは思わなかった」「そう。お友達の家に呼ばれて自分の家はおかしいとは思わなかった?」「余り友達いないからなぁ。姉さんには俺はいてもいなくてもどうでも良かったんだ?」「バカね。なに言ってるのよ。徹を守るために高校卒業するまで独立しなかったのよ?徹は私にとって守らなきゃいけない大事な弟よ。」「その割に厳しかったけどな」「一人になっても強く生きていけるように厳しくしたのよ‼️」「そうだったの?」「当たり前でしょう。」「てっきり姉さんは俺の事が嫌いなんだと思ってた」「お馬鹿」足立姉弟は、溜息を付いて会食の席へ向かった

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