第32話 噂
「ねぇ清水さん、足立さんと山根さんの話聞いた?」隣の課の鈴木さんが手洗いで、声を掛けてきた「いえ。何かありました?揉め事ですか…」「違うわよ。足立さんが山根さんにプロポーズしたそうよ。」大スクープを知らせた事に満足顔の先輩である「プロポーズですか?凄いですね。でもどうして鈴木さんが知ってるんですか?」不思議そうな顔のさき「エレベーターホールで堂々としたそうよ。」「へぇ…足立さん想いきりましたねぇ。お付き合いしてるのすら知らなかったです。」「清水さん同期だけど知らなかったの?仲良さそうなのに」「いくら同期でもプライベートなことまでは知りませんよ。鈴木さんは、同期のプライベート詳しいですか?」逆に問われ納得する鈴木であった。「確かに男性の同期の事はよく知らないわぁ」「そうでしょう?でも公衆の面前でプロポーズとはビックリですね。」さきだけではなく事実とは違う内容が真しやかに広がっていった
「課長聞きました?足立君のプロポーズの話…」同僚の河本が面白そうに話しかけている「それ違うよ。」杉山班長が否定する「えっでも山根さんが嬉しそうにしてたって同期の子が話してたって」河本は、広がっている噂を耳にはさんだらしい「その時エレベーターホールに僕は居たんだよ。付き合ってくれって言ったのは山根さんの方。足立君はプロポーズなんてしてない。」杉山は、断言する「そうなんですか?今手洗いで隣の鈴木さんに同じ話を聞いたんですよ」さきも着席しながら会話に参加する「どっちなんだ?」津島課長が杉山班長に尋ねる「僕は現場にいたんで間違いないです。」再度断言する「その後に変化があったとか?」河本が別の可能性を考えるが「昼飯も食べずにどうやって断ろうか悩んでいたぞ。」と杉山班長「それなら間違った噂が広がってしまってますね」さきが気の毒そうに呟く「業務に影響が出なきゃ良いんだが」津島も心配そうに呟く。「影響なんてあります?」河本は意外そうに津島を見る「あると想うよ。」杉山班長も頷く「一緒にプロジェクトを組ませられなくなる。関連業務があると外される」「そこまで?」「上手くいってるうちは良いがプロジェクト途中で、別れてみろ。お互いやりにくいし、周りもやりにくい。上手くいったで公私混同とか言われたりする」「お二人とも優秀な方ですからね。マイナスな評価になるとダメージが大きいかもしれません。」さきも頷いた「局内で付き合うのは隠していた方が良いぞ?二人とも」津島課長が微笑む「結構職員同士の夫婦いるでしょう?」河本は不思議そうだ「だから上手く付き合うか、もしくは異動を希望するんだよ」杉山班長が代わって答える「成る程‼️」納得の河本とさきであった「足立さん思いきったなぁと想ったんですが違いましたね。ちょっとガッカリしました」とさき「そこでガッカリするの?」河本が驚いて顔を見る「えっ、だって足立さん、上手に山根さんと付き合ってたのねぇと感心してたのに違ってたので…あっ足立さんには言わないで下さいねぇ。ここだけの話です」「清水さんは、足立君に関心ないの?」「ええっと、関心がないわけじゃないではないのですが、私は今それどころではないので、恋愛自体に興味ないです。その余裕もありません」「資格試験でも受けるの?」「いえ個人的なことなので。」「困った事があったらちゃんと相談しろよ?」津島が声を掛ける「はいありがとうございます。」さきは素直に頭を下げる「足立君に勝ち目はないのかねぇ」杉山は、独り呟く。「杉山班長?」隣にいた津島が振り向く「独り言です。気にしないで下さい」
一方当人である徹は「山根さんといつの間に付き合ってたんだよ?」「いえ僕は付き合っていませんよ。」「付き合ってもいないのにプロポーズしたのか?」「プロポーズってなんの事ですか?」「とぼけなくて良いよ。みんなもう知ってるから堂々と付き合って良いぞ❗」「いやいや付き合っていませんって言ってるでしょう?プロポーズなんて誰が言ってるんですか?とんでもない噂だ」「山根さんっていいこだぞ」「いやぁ僕は知らないんです。一緒の課になったこともないですし。付き合う気もないですから」「本気か?彼女部長の姪っ子っだって聞いたぞ。」「だから何ですか。僕に関係ないですよ?」「山根さんを傷つけたら左遷されちゃうぞ?」「それこそ酷い言いがかりですよ。公私混同じゃないですか…」そこへ「済まない。足立君はいるかい?」「小野部長❗」「私なら此処におります。」「悪いね。ちょっと時間貰えるかなぁ?」「班長。席を外します」「行ってこい」「お邪魔したね。少し足立くんを借ります」そう言って部長は足立を連れて部長室へ誘った
「そこに掛けてくれる?」会議用テーブルの席を指す。その対面の席に腰を下ろして部長の小野が声を掛ける「足立君今凄い早さで噂が広がっているのは知ってるね?」「はい今ちょうど聞いたところです」「事実なのかね?職員のプライベートに口出すつもりは無いのだけど気になったもんでね」「はぁ…」「エレベーターホールでプロポーズ」「してません」「えっ?でも」「してませんよ」「そうなのかい?」「はい。それに先方から付き合ってみない?と言われただけです」「先方って山根さんだよね?」「ええ。姪っ子さんらしいですね?」「ああ。そうなんだ。済まない。足立君には迷惑を掛けてしまって。」「…」「この通りだ」部長が頭を下げる「はぁ…」この噂が消えるまで3ヶ月かかった。
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