第28話 出会っていた二人

「清水くん大丈夫?」「課長…問題ありません。家族の知人だったらしくて連絡先を教えていたんです」「簡単に教えちゃって良いのかい?」津島が同じ事を言った「あら失礼ね❗私が危険人物とでも?」「いや誰の連れかも分からないから簡単には教えるべきではないと思ってね。失礼した」「僕の連れだよ。彩子さんまだ彼女と話してるの?なかなか戻ってこないと思ったら」「福島の連れか?」「ああ新しい仕事のパートナーなんだよ。さっきから気にはなってたんだけどほっといてごめんね。僕は福島です。津島とは大学の同級生なんだよ。結局、彩子さんの知り合いだったの?」「彼女に良く似ている人を知っていてね思わず声をかけたの。そうしたらビンゴだったの。来て良かったわ。さきちゃんに会えて」「さきちゃん?」津島が呆気に取られている。そして思い出した「この間電車で電話していた非常識なやつだ」津島は冷たい目で彩子を見た「何ですか?」彩子も負けじとにらみ返す「フランス語でしゃべってただろう?大声で」「あれは急に電話が掛かってきたのよ」「車内では携帯電話を使って話すのは、禁じられてるのに。その人延々と二駅しゃべっててとても煩かった」冷たくいい放つ「あら傍の学生も騒がしかったじゃない?」「あれはまだ中学生の子供だった。だから許されるってもんじゃないぞ」「あっあのちょっと津島、僕の仕事相手だって言ってるだろう?ここで面倒事起こすなよ」「俺はいい大人がガキと同じことすんなって言ってるんだよ。」「課長…どうしてそんなにむきになってるんですか?」「清水さんに何かあったら大変だからさ。」「大丈夫ですよ。課長」「清水さんが大丈夫なら良いんだよ。でも車内での通話はやめてほしいな。聞きたくもない。痴話喧嘩なんか」「失礼しました。確かにくだらない内容だったわ。フランス語が分かるのね?」「そういやぁ留学してたもんな。津島」「1年だけだがね」「お恥ずかしい」「いや内容よりも通話の事を気にしてほしい」「分かりました。日本は久し振りだったので気を付けるわ」「分かれば良いよ。じゃあ失礼する清水さん行こう」「はい。あの確かに非常時以外の通話は、本当にご注意を。では失礼します」「後で連絡するわね❗」さきは礼をして立ち去った

 さきは足立彩子の電話に慌てていた。まだ就業時間中なのだ。失礼しますと席を立って折り返すと彩子はすぐにでた。まだ就業中であと20分後にかけ直すと伝えた

20分後さきから電話をかけると「今日会えないかしら?」「今日ですか?」「そうなの。今横浜にいるのよ、実家に行く予定があるの」「もしかして今電車ですか?」「大丈夫よ。駅前で、カフェにいるの」「良かったです。」「これから兄弟に会うのよ」「ご兄弟のと待ち合わせですか?」「そうなの。実家に顔を出したらすぐにさきちゃんに連絡するわ。」「連絡を貰ったら私がもよりの駅へ迎えに行きますね」「ありがとう。じゃあまた後でねぇ」会話が済んださきは駅へと急ぐ「お疲れ様、清水さん」「あらお疲れ様足立さん。今日は早めに帰るの?」「うんちょっと姉が近くまで来てるんだけど家の鍵を持ってなくて俺待ちなんで急ぐんだ。じゃあまた明日」足立は早足で駅の改札を抜けていった

さきはいつも通りの電車で帰宅した

「お帰りなさい。さきさん今日はお客様がいらっしゃるのでしたね。」執事を勤める渡辺が確認する「はい。でも時間がはっきりしなくて、先程必ず伺うと連絡を貰ったので今夜いらっしゃられるのは確実です」「分かりました。お食事も念のため準備いたしましょうね」家政婦の夕子は楽しそうにキッチンへと行ってしまった「渡辺さんは佐江子さんを知っているんですよね?」「はいその頃は秘書を勤めておりましたので」「では佐江子さんのお話が出きるのね。良かったわ」「佐江子さんのお話が出きる人は多い方が良いですものね。奥様と旦那様にも愉しく話せる内容なら良いですね」「はい、私もそう思います」

一方、彩子は弟と駅前で落ち合って我が家へと向かっていた「ただいま~て誰もいないけれどね。」ふと呟く弟に「寂しいならおじいちゃん達に帰ってきて貰えば?」「いやぁ。それが一人もいいもんだと思い始めていてね」「あらあなたは結婚して子供を作って家を継がなきゃ…」「何でおれなのさ。姉さんでもいいじゃない」「私は要らない子なのよ」「前にも同じ事を聞いたけど何が原因なんだよ。」「良いのよ、もう過ぎたことだもの。私は独立して生きていけるのよ。この家も徹が継いでくれれば家族も安心だし。もうここへは来ないから私の荷物は全て処分して徹の部屋を広げて結婚して住めるように改装立て替えるのもいいと思うわよ?」「姉さん❗いい加減に機嫌直してよ」「私は機嫌悪くないわよ。あなた覚えてる。千葉のケーキ屋さん」「場所は分からないけれどおいしかったのは覚えてる」「そう。私、その時の関係者に会うのよ。もう日本に戻る理由がなくなるのよ。」「俺は戻る理由にはならないのかよ」「徹とは電話でもパソコンでも会えるじゃない」「姉さん❗」「俺は一人になってもいいのか?」「もう社会人じゃないの、佐江子さんが言ってた弟が一人前になるまで家を出ちゃいけないって」「クリアしたでしょう?条件は…」「俺の意思は?どうでもいいの?それじゃああの人達と変わらないじゃないか」「一緒にしないでよ」「同じだよ」「とにかくこれから会いに行くのよ。楽しみなの。徹元気でね❗」「姉さん」彩子は家を出ていった

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