第18話 足立の事情

「ねぇさき、今日帰りに寄ってみようよ」突然真澄に声を掛けられた「えっと何処へ?」駅に向かって歩いていたさきは遊歩道の脇に立ち止まる「だから足立くんの家よ」「どうして?御家族がいらっしゃるでしょう?」「居ないわよ」ボソッと呟く「何、どうしたの?」「足立君今独りなんだよ。家族は旅行に行ってるってさ」「そうなんだ。」「ご飯食べてないかもしれないでしょう。何か口にできるものを届けてあげようかなぁっと思ってさ」「良いんじゃない。同期想いで…何より。あっ、なる程私にも付き合えと?」「お察しの通り」「それでは駅前で買い物して届けましょう」「うん。そうしよう。付き合ってくれてありがとう」「どういたしまして。親友の母性に美味しいケーキで手をうちましょう」「ハイハイ」二人揃って足立の住まいの近くの駅で降りた「でも意外だわ」「何が?」「お昼に後輩たちが足立さんの家にお見舞いに行きたいって言ったら迷惑になるから止めなさいって一喝してたじゃない?」「下心が見え見えだったからよ」「そうなの?きにならなかったわ」「大学時代からの付き合いだからね」「ふーんそれだけ?」「まじで付き合ったりしてないわよ❗足立君てさ昔から頑なって言うか人付き合い下手でしょう?」「…」「学生時代はお互いに付き合ってる人居たよ❗私は4年間、コースもゼミも一緒でさぁ何故か教授に世話係をさせられてた」「世話人?」「うん嫌々だったけどね。」「でしょうね。でも随分ね」「足立君て拘りが強いと言うか思い込みと言うか他人の言うこと聞かないでしょう?」「そうかしら?」「学生時代にも色々やらかしてね、教授に食って掛かったり…」「へぇ意外ね。彼はそんな風に見えないけれど?」「勿論方にも問題点は、多々有ったとは思うけれど公衆の面前でというのはやり過ぎでしょうね」「何があったの?」「気になる?」「話の流れとしてはね。きっと足立さんの正義感だったんでしょう?」「良くわかったねぇ。正義感だったのに教授が面倒にしたの。自分を正当化しようとして足立君を追い込んだの」「それで足立さんはどうしたの?」「学長に直訴した」「まぁ。思いきったわね。そこまでしたの?」「結局、足立君に処分はなかったわ。でもお目付役が必要だって…私ともう一人男子学生が担当したの」「断れなかったの?」「お世話になってる教授からの依頼だったし、授業中だけ同じクラスに居て見てれば良いだけだから引き受けた」「それで足立さんの事カバー出来たの?」「大分ましになったと思うよ❗この状況ではこうする方がいいとかこの方法が無難だよとか。世間一般の常識を教えてあげたの。足立君って中高一貫校の進学校で男子校だったから全然女の子に対する思いやりが欠如してたの」「何となくわかるわ」「でしょう?随分と人当たりが良くなったと思うわよ。成長したわぁ」「あらやっぱりお母さんかしら?」「まぁ問題になった教授も女性だったし珍しく感情的な足立君の対応も結構そばで見ててヒヤヒヤしたのよ。まぁそれは置いといて」「でもどうして真澄さんが足立さんの様子を見る必要があったの?」「後輩たちが足立君を見舞うってことは人事課の仲間に個人情報を聞き出すって事でしょう?」「そんなこと出来るの?」「だって足立君の家は知らないって言ってたんだよ、あの子達」「ただ言っていただけじゃない?話題にして…」「大勢で押し掛けそうで、体調悪い足立君の状況とかのりで無視しそうじゃない」「そぉ?考えすぎでしょう。私達だって同じじゃない?」「私達は違う」「何故?」自信たっぷりに微笑んで「私は足立君の家を知ってる」「ほおぉ」「ちょっと誤解しないでよ」冷めた表情のさき「無理があるわよ。色々と」「学生時代に成り行きで足立君を家に送り届ける事があっただけよ。私は同じ車に乗ってただけよ。」「ふーんそうなのね」「ちなみに車を運転したのが元カレだったんだから」「そんなに必死にならなくても良いわよ。」「さきの目が疑ってるから…」「なんだか必死な真澄さんが可愛くてごめんなさい。つい調子にのっちゃたわ。」と小さく微笑む「わかってるなら良いのよ。なんだか手の掛かる弟みたいなんだよねぇ。」「お母さんじゃなくてお姉さんだったかぁ」「いや実際に弟は居ないわよ。兄と姉が上にいるけど」「3人兄弟ですか…羨ましいわ」「さきもお姉さんがいるんでしょう?」「うん年が離れすぎてて…」「親子みたいな感じになるんだってね。誰かテレビで言ってたわ」(会ったこともないなんて言えないわ「此処よ」駅から10分程歩いたが荷物を抱えた割には早く着いた「足立君に鍵を開けて貰おう」真澄は携帯電話で足立へ連絡して鍵を開けさせている。まるで姉か母親との会話に聞こえてくる「いいから開けなって。食事と飲み物買ってきたから」慌ててガチャと鍵を開ける音がした「お疲れ様です」頭はボサボサで眠そうな声でドアを開けてくれた「こんばんは、具合どう?」「あれ、清水さん?高橋だと思ってた」気だるそうな声に「アホ、私にご飯は作れないわよ❗かえって悪化する。」「それ自信を持って言うとこなの?」さきが呆れた声を出す

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