第17話清水家の反応
「ただいま-お父さん、お母さんいらっしゃいますか?」「おかえりなさい、さき。お父さんはお風呂よ。今夜はさきと一緒に晩御飯を食べるって楽しみにしているわ」ニッコリ微笑んでさきを迎える「お母さんこの写真を見てください」さきは数枚の写真をテーブルに広げた
「あらまた写真なのね?どれどれ…」末子から借りてきた写真を手にとって見つめた真理子の手が震えている。老眼鏡をかけ直してじっくり見つめていた「さき、この写真はどうしたの?どこで手に入れたの?」「これは西寺紀夫さんお姉さんが持っていた写真です。全部同一人物ですよ、紀夫さんとさえ子さん夫婦と赤ちゃんは私だそうです」「沙江子だわ」「やはりそうですか?」「でもどうして…」「これからご説明します。嬉しいような哀しいような複雑ですけれど」「沙江子。あなたなの?でもどうしてこんなことしたの?私達の娘が子供を一人残して残酷なことを…」真理子は信じられない、いや信じたくない気持ちが口から零れていた「お母さん、佐江子さんにも何か事情が有ったんですよ。きっと」「どんな事情が有っても子供を一人残して姿を消すなんて許せないわ。さきだって辛い思いしたでしょう?」「私は記憶に無いので本当に親に対する思いって無いんです。それよりは、お父さんとお母さんが血の繋がった祖父母かもしれないという方が気になります」「誰が祖父母だって?」ドアを明けてリビングに入ってきた父宏が声をかけた「お父さんただいま」「お帰り、さき随分大きな声だったね」「あなた、そんなこと言ってられないわ」「真理子、どうした?どうして泣いてるんだ?」「お父さんこちらの写真を見て貰えますか?」さきはテーブルの写真を宏の席に近付けた「この写真、一体どこで?」「この沙江子は家を出たばかりの頃に似ている」「こっちの沙江子は少し痩せているね」写真を見比べて宏は娘の体型の変化と年頃になり化粧が変わっておとなびていく経過を見ているようだった「驚いたでしょう。あなた」「この沙江子は、赤ちゃんを抱いている」「ええ。さきですよ」「やはり間違いないんだな。」「ええ。さきは間違いなく私たちの孫なんです。」「でもずいぶん佐江子のイメージが違うね。こんなに変わってしまうものなんだな。それと、あちらのお姉さんには時々会いに行ってたのかい?」「そうですね。でも半年位会わないのが常だったそうです」「赤ちゃんを抱いている頃はすっかりスマートになっているわ」「末子おば様の話しではつわりが酷くて会う度にげっそり痩せて心配してしまったそうです」「まぁつわり…」「こんなに痩せちゃうものなんですか?」さきも不思議で聞いてしまう「うちの家系だわ。沙江子もきつかったのねぇ。私もつわりが酷くて痩せたのよ。沙江子程じゃないけれど。」真理子は少し笑ってから他の写真を見比べて紀夫のそばで笑っている沙江子を見て「あなたなのね。沙江子。さきを横浜まで連れてきたのにどうして私達に会わずにいなくなったの?こんなに可愛いさきを手放したりしたのよ。信じられないわ」「お母さん。どなたにお会いしてもお話を伺っても西寺夫妻の悪い話は聞きませんでした。佐々木のおじ様もあり得ないと…」「でも事実あなただけ横浜の施設の前に残して立ち去るなんて酷いことしてるわ」「お母さん、落ち着いて。佐々木のおじ様は、事件に巻き込まれた可能性があると話していました」「事件って?」「まだハッキリしないので言えないそうです。でも近いうちに説明できるであろうとおっしゃってたわ。」「事件って‼️何だね?どう言うことだ?」
「はい。おば様が最後に会ったのが6月6日私の誕生日で次の休みには、横浜に行くと沙江子さんが話していたそうです」「ではその日帰りに何かあったと言うことか」「佐々木のおじ様は、何か情報が有るようでただ推測で家族を振り回したくないと話されていました。」「しかし、この写真で沙江子の変化もわかるしさきは孫で間違いないのだな。」「検査結果はまだですが、可能性は、かなり高いですね。」「あちらにも検査を」「ええお願いしてきました。快く受けてくださいました」「そうかーやっと判るんだな。でも沙江子はさきを横浜に残して何処へ消えたんだ?」「事件って言うのは一体どんな?」「私にはわかりません。」「さき。君が孫なら戸籍を直した方が良いのでは?」「しばらく考えたいと思います。清水で長い時間過ごしたので今更西寺を名乗るには違うと思うんです」「さき。よく考えて見て、一緒に考えましょう」「ありがとうございます。」食事を終えてさきは、自室に戻った
「久し振りにさきと食事だったのに落ち着かなかった」ため息をつく宏「でも現実問題として沙江子がさきの母親であればさきは孫です。血筋ですよ」「さきはさきだ。世の中には孫を養子縁組して
子供にする人もいるんだ。うちは知らないまま偶然実の孫を養女にしてしまったがこのままで良いのでは?」「そうよね。弁護士にも相談してみましょう」「沙江子はどうしているのでしょう?」「佐々木さんの連絡を待つ方が良い気がするがな」「ええ。わかっています」
年休明けさきは職場に土産を持参した「茨城に何かあったの?」「ええ親戚に会いに行ったんです」「そうなんだ清水さんて茨城の人なの?」「父親の出身地が茨城でした」「ああなる程ね。戴きます」「どうぞ召し上がれ」職場のお菓子入れの横スペースにお菓子を置いた
お昼には親友の高橋真澄にお土産のしおりを渡す「可愛いね。」「真澄さん良く読書してるから使えるかと思って…」「ありがとう。しおりって重要なのよ❗すぐ使うわ」「お役に立って良かったわ。今日は足立さん見ないわね」「足立君の事気になる?」「お揃いのしおり買ったから渡そうかと思って」「足立君のもあるのね?」「だって同期だし、比較的に良く一緒に居るじゃない?」「まぁ私達は3人仲良しだと思われているわよね。」「ええ。何かと頼りになるし。」「じゃあ教えてあげる。足立君熱発して休んでる」「まぁ。風邪かしら?」「昨日は普通に仕事してたよ。」
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