第13話その後

夜9時。玄関のチャイムが鳴る

「はーい。保お疲れ、」「今晩はお邪魔しまーす」「いらっしゃい。夕飯は済んだの?」「家に帰ってから食べます」「あら今日はお母さん達出かけてるでしょう?」「カップ麺でも何でも食べますよ。」「保君、遠慮しないで食べていきなさい。うちの母さんも料理は旨いぞ?」雄二が誘う「知ってますよ。いつでも美味しいですから」素直に答える「じゃあこっちに掛けてすぐ準備するから…」「ありがとうございます。お言葉に甘えて…」「さきは2階に居るんだ。食事済んだら上がってきて」「分かった」「はいどうぞ保君。」枝里子の母は手早く料理を並べてご飯を手渡してくれる「戴きます」手を合わせから食事を始める「子供の頃の癖って抜けないわね」「うちの母も煩かったですよ。保育園でも教えられたけれど」「そう言えばさきちゃんも同じよね。手を合わせてたわ」「どこの家でもしつけられたんだろうか?」「さきちゃんママも食事を取る前に手を合わせてたっけ…」

30分程して枝里子の部屋に保が上がってきた「お帰りなさい保さん」「やぁただいま。さきちゃん」「色々判ったことがあったんだって?」「ええ怖いくらい」「西寺のおじさんにお姉さんがいて会いに行く話してたんだって。」「どこに住んでるの?」「当時は茨城県の南部に住んでて時々会いに行ってたらしいわ」

「じゃあそのおばさんを捜せば何か判るかも知れないね?」「でも、怖いんです。」「怖い?」「今まで何も判らなかったんですよ?急に色々判っても戸惑いのほうが強くて…」「そう言う事って有るよね。さきちゃんは当事者だからさ。俺たちは他人だから平気なんだよ。枝里子もさきちゃんの状態を把握して事を進めないとな。」「保、父さんみたいだわ」「そう言えばおじ様も似たようなこと仰ってたわね」「私は警察官なのよ?素人と一緒にしないでよね。」「枝里子はせっかちだからさ。時々強引なときがあるじゃないか。さきちゃんにプレッシャーをかけたりしないか心配なんだよ」「保は私の父親か?」「枝里子さん幸せなことですよ?」「さきちゃんの事も心配なんだよ?」「分かっています。保さんありがとう」「さきちゃんママは横浜出身だって、編集者さんが聞いた事があるって。」「そうなんだ。枝里子のお母さんが一度だけ聞いたことがあるって話してたよね?」「ええ。誰かの話で横浜のことを詳しく説明してたって」「母の事も調べてみます。私は横浜にずっと住んでいるので」「そうだね。行方不明とか尋ね人とか20年前の記事とか捜して見ると良いかも。知り合いがいれば頼みごとも出来るんだけどなぁ、担当地区外だと難しいのよねぇ」「ううん良いのルールを破るのは良くないわ。そんな事して欲しくないわ」「さき…」「大丈夫探偵でも使って調べて貰うわ」「それもひとつの方法ね。もう一つ気になっていることがあるのよ」「何だよ?」「さきが編集者に貰った通帳の名義。漢字で書いてあったよね?」「ええ漢字で名前を見たのは初めてだったわ。ずっとひらがなだったし。」「当て字だよね?さきって読めないことはないけれど」「どんな漢字だったの?」「清紀と書いてさきだった」「ふーん確かに余り使われない字だねぇ」「紀はおじさんの名前からだろうね」「うん。でもさきちゃんママは沙江子さんでしょ?清って字は入ってないんだ。もしかして苗字に清が入るんじゃない?」「それ、私も実は気になっていて私が世話になっている清水家に行方不明の姉がいるんですね」「まさか」「そんな都合良く…」「そうですよね。考えては打ち消してでもそうなんじゃないかって…気になっているんです。明日戻ったら姉の写真を捜してみようかと…」「それならうちに有る写真持っていきなさいよ。家の人に見て貰ったら?」「そうだよ。下に降りて写真探そう。この間捜してくれた写真があるでしょう?」「そうね」3人は揃ってリビングに降りた「もう帰るのか?」雄二の声に「写真見たいの」「そこに有るぞ」どうやら雄二は写真入れを整理して新しくファイルを作ってくれたらしい「さすが父さんだわ」「ありがとうございます」「うちに有るのと同じだなぁ」「そりゃそうだよ。紀夫さんが撮影して焼き増ししてくれたんだ。同じやつだよ」「成る程ね」「どうして急に写真なの?」「さきの通帳名義が漢字だったの」「ああさきちゃんの名前ね?確かさんずいに青とお父さんの一文字」「母さん知ってたの?」「あら沙江子さんに聞いたことがあるもの」「苗字は聞いたの?」「迷惑を掛けたから言えないって教えてくれなかった」「清水以外にどんな苗字があるかな?」「清宮。清武。清塚。清田。清川。結構あるなぁ?」「電話帳に載ってる?」「今時は個人情報の問題で出してないだろう?」「うーん。警察に相談するのが一番じゃない?」「実は清水の家には25年前から家出をした娘がいます。私はたまたま清水の家に養子に入ったのですが、私が養子に入った年から全く連絡が取れなくなってしまって。」「まさか…」「まさかね?」「それで写真を持ち帰って清水の両親に見て貰おうかと…」「良い考えだな。そうすると良いよ。全部持っていっても構わんぞ」「全部は重たいでしょう?顔がちゃんと写ってるものと角度が違うものをいくらか選ぶと良いわ」

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