第10話家族への想い

雄二がパソコンを、持って現れた

「まずは西寺さんの名前…」を入力する「知らない事ばかりだ。違うんじゃない?」次に絵本の題名を入力していると途中に関わらず出てきた「えっなに?有るの?絵本」枝里子の声に皆がパソコンの画面を見つめる。18年前に出版された絵本が正にさっちゃんとえっちゃんとたっちゃんだった「え~とこれは、どういう事かしら?」「西寺さんの名前は無いわよ?どこにも書いてない。わざとのせてないのかな?」「出版会社を調べて見たら?」「そうね。問い合わせしようか」佐々木家での夕食後の会話がものすごく弾んだ事が分かる

盛り上がっている中で一人だけ置いていかれている感があるのはさき本人である。戸惑っているというのが本音だ。

佐々木家と遠藤家が勢揃いして子供頃の自分探しをしてくれている。自身で探すのが大変なのは分かっている。一生掛かっても判らないかもと思いながらもずっと捜していたさきの幼少時代。記憶は全く無いが写真や話から自分でも西寺さきが本当の私のなのかもしれない。いやそうであって欲しいとも思っている

「さきちゃん大丈夫?」保の母真知子が心配そうに顔を覗く「大丈夫です。ただ驚いただけです。私も中学生の頃からずっと自分を捜していたんです。でもどう捜して良いか分からなくて、まずは家の周りから始めて自転車で、電車で、車でとあちこち歩いて気になるところがないか、誰かが私に気が付いてくれないだろうかって」「そうだったの」真知子はさきの背中を擦りながらさきの言葉に頷く「さきちゃんも辛かったわね」「イイエ全然。正直恵まれた生活を送ってきましたので、苦労もなく大人になったんです。でも何故親は私を施設の前に一人置き去りにしたのか?今元気でいるのか?何をしているのか知りたいような知らない方が良いような気もして怖いと言うのが本音です。」「不思議よね。あんなに大事に可愛がっていた二人がさきちゃんだけを残してどこかへ行くなんて…信じられない」いつの間にかさきのもう片方の横に座っていた久美子が「だから絶対蒸発なんかじゃない。事故に巻き込まれた可能性が高いって警察に届けを出して捜して貰ったの。うちの夫は、退職してからも暫くは捜していたわ」「本当に有りがたいことです。私が西寺さんの娘かは分かりませんが皆さんの事は有難い事だと思います」「ちなみに転勤族の私はあちこちで西寺さんに似ている人が居ないか捜したりしたんだよ?」「あらそうなの?初めて聞いたわ。」「私も初めて真知子に話したよ。保にはよく話してたけど」「保に?」「保にさ、うちは佐々木さんのようにさきちゃんの事を探す手段がないだろう?だから父さんは転勤先で西寺さんに似ている人が居ないか?さきちゃんに似ている子は居ないか捜してくれって」「まぁあの子そんなことを言ってたの?」「自分は、枝里ちゃんの傍に居るから、捜すのはお父さんお願いって」「まぁ何て良い子なの」「婿にはやらないわよ?」「残念だわ。」「嫁に来てくれるなら問題ないわよ。」「のったわ」「何の話だよ」横から違う話題に盛り上る二人の母親に保が声を掛ける「さきちゃんもおばさん達にあきれてるんじゃないの?」「いいえ。楽しい会話でしたよ。」と微笑む「それなら良いけど」「さき、こっちに来てよ。出版社が分かった」「そうなんですか?」「来週にでも訪ねてみます」「一緒に行くわ」「大丈夫ですよ」「私が同行しよう」「なんで父さんが出てくるの?」「これでももと刑事だ、話の聞き方があるだろう?」「私だって刑事だよ。」「なりたてのひよっこじゃないか。」「今時の捜査と昔の捜査は違うと思うよ❗」「あのお二人ともご一緒お願いします。」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る