第6話さきの事情

さきは夢中になって育った状況を語った。今まで警戒していたのが嘘みたいに…スムーズに出てくるのだ。

「さきさんは清水さんの家を継ぐ勉強をしたのかな?」「いいえ、清水の両親には娘が一人います。私とは親子とも言えるぐらい離れた方で、本人には会った事もないんです。継がせるなら実子だと思うんです。元々私に無理に継がせる気はないそうです。養女だからではなく自分の進みたい道に進んで欲しいと引き取られた頃から言われています。事業を継がせることが枷にならないようにと説明されています。」「へぇ‥お姉さんがいるの?」「ええ、家を出て今は音信不通なので何処にいるか分からないらしいです。ですから私自身は本当にやりたいことをやらせて貰いましたよ」「習い事とか?」「ええ、スイミングや習字とか」「語学とかは?」「うちは父の会社に研修でいらした方がよく出入りしていたので外国語を自然に耳にして馴染んでいたのでスクールにかようことは無かったです」「そうなの?」「英語、中国語、フランス語、ドイツ語とかこちらが日本語を教える代わりにあちらの言葉を教えていただいたんです」「良い考えだね」「子供同士で友達になるともっとスムーズに学べますよ」「僕らの捜してるさきちゃんも積極的に動く子だったなぁ。枝里子を庇うのは勿論だけど何にでも興味を示す子だったよ。」「本当に西寺さんなら良いのに」さきは呟いた「手懸かりは身に付けていた衣類だけなの?」「はい。それとポーチがあります。可愛いキャラクターのポーチ」「今も手元に有るの?」「はい。携帯にも残していますよ。ご覧になりますか?」「僕が見ても分からないと思うけど一応見せて貰える?」「どうぞ」さきは携帯を開き保護された当時着ていた衣類やポーチを保に見せた「これって僕の携帯に転送してくれない?枝里子にも見せたいんだ」「良いですよ。直接佐々木さんの携帯へ送りましょうか?」「そうだね。その方が手っ取り早い❗」さきはデータを保と枝里子の携帯へ転送した「来た来た。やはり僕には分からない。でもこのポーチは枝里子も色違いを持っていたから覚えているよ。さきちゃんが持ってたかは知らないけれど」「そうですよね。男の子は興味ないですもんね」「うーんしばし沈黙が続いた。」そこへ保の携帯がバイブした「枝里子だ。」保は一度深呼吸して電話に応答した「もしも‥」「保、これどういうこと?」「何が?」「今データが送られてきたのよ。さきから❗」「じゃあ僕じゃなくてさきさんに連絡しろよ。俺に聞くこと?」「だっていきなり…」「それでも警官なのか?」「今それ関係有る?」「いつでも冷静にじゃなかったのか?」「うるさい、ねぇ保は知らないの?」枝里子の戸惑いが伝わる「今、目の前にいるよ」「ええ、誰が?」「清水さきさんがだよ」「なんでよ。どうして保がさきと一緒にいるのよ?」「横浜駅でバッタリ会ったんです。それで一緒に夕食をとお誘いしたんです」「さきなの?」「はい清水です。こんばんは」「ああこんばんは。保は横浜の病院に行ってるんだっけ?」「そうだよ。急だったから枝里子にも連絡するタイミングがなくてさ」「ふーん、連絡はてっきり私に来ると思ってたのになぁ」「スミマセン。連絡するのを迷っていたところでした」「でも保とは、会ったんだ?」「なれない横浜駅周辺で飯屋さんを捜してたウロウロしてたんだよ。見かねて清水さんが声を掛けてくれて今に至る」「成る程ねぇ。ところでこの写真」「私が保護された当時身に付けていたものです」「枝里子、見覚え有るか?」「ポーチは赤色だよね?」「ハイそうです。ご存じですか?」「私のと色違いなのよ。さきちゃんママが赤を買ってうちの母が黄色を選んだの。覚えてるわ」「じゃあ間違いない?」「でもね、あの時期はあのポーチ流行ってて。人気キャラクターが入ってたから。年代が同じなら偶然同じものを持ってた可能性は高いよ。」「そうですか…」「だからさ、一度僕らの住んでる街に遊びに来てみたら?って話してたんだよ」「良いかもね。ねぇさき、おいでよ。うちの親とか会ってみない?」「そうですね。出きるだけ早い時期に尋ねてみます。お二人のご都合のよい時に…」「保、横浜はいつまで?」「明日は帰るよ。夜になるけど」「週末は居るの?」「近場で勤務だから遅れてでも行けるよ」「さき、今週末おいで。」「おい、枝里子、清水さんだって都合があるだろう?」「善は急げって言うじゃないの」「相手の都合も考えろって」「あ、あの大丈夫です。土曜日に伺えばよろしいですか?」「駅に着く頃私が迎えに行くよ」「ありがとうございます」「ねぇ金曜日の夜は?」「おい枝里子、いくらなんでも早急すぎる。清水さんの気持ちも考えてやれよ」「大丈夫ですよ。駅前にホテルとか有りますよね?予約さえ取れれば直接伺います」「何でよ、うちに泊まればいいじゃない?」「それはさすがに…」「迷惑じゃないよ。うちの親たちもさきに会いたがってるの。」「枝里子。ストップ。」「何よ。」「医者の立場で言わせて貰うと清水さんを困らせているだけだぞ。」「遠藤さん、大丈夫ですよ。」「いや無理して合わせてるでしょ?清水さん。こんなに急かして、もし本人じゃなかったら?清水さんはもっとダメージを受けるんだぞ❗分かってるか?」「保、間違いないって」「それはお前の思い込みかもしれないだろう?落ち着け。」「遠藤さん…」「僕は反対だ。せめて2週間くらいあけてお互い冷静になるべきだ。」「保。さきにやっと会えたのにどうして?」「佐々木さん、それはきっと,私以上にあなた自身がダメージを受けるからです。」「私が…」「西寺さんをずっと捜していたんですよね?今までにも人違いだったことが何度か有ったのでは?その度にダメージを受けた佐々木さんをずっと支えてきたのは遠藤さんですよね?」「清水さんそれは違う」「違いますか?それは勘違いしました。ご免なさい」「わかった。さき再来週の金曜日泊まりに来て、私も写真とか資料とか捜しておくから」「分かりました」「保は、再来週こっちにいるの?」「スケジュールみないとわからん」「保はいなくても良いかな?」「随分だな?」「枝里子さん、遠藤さんのお仕事を心配してるんですよ?」「どこらへんが?」「心配してないよ別に」「そうですか?」クスクス笑うさきに「そうだよ!」揃って答える二人「じゃあね。さき再来週合う前に連絡するから‼️」「分かりました。今のうちに遠藤さんにアクセス方法を教えて戴きます」「オッケー任せて‼️」

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