第4話気がかり

「良く似てたでしょう?さきちゃんママにそっくりだった」「諦めてないのか?」「保だってさきだって思ってるくせに」「そう思う?」「あんなにあっさり引き下がるんだもの何か仕掛けがあるんでしょう?」「随分僕を買い被ってくれるね」「だって、保だもの。何かあるんでしょう?」「おいおい。僕は策士じゃないぞ」「えーじゃあ何も仕掛けてないの?」「だってさ初対面でいきなり何が出来る?」「な-んだぁ。私は個人の携帯番号を載せた名刺をさきにだけ渡した」「ああなる程ね」保も同じ様にさきには個人の携帯番号を載せた名刺をしっかり渡してあるのだが枝里子には黙っておく。保が思うにさきがかけてくるとしたら同性の枝里子宛が、確率が高いだろうと「保も大したこと無いのね」枝里子は呆れた声を出す「僕は刑事じゃないからね」冷静に応える保であった

しかし、数日後さきからの連絡を受けたのは保の方だった

「突然連絡して申し訳無いのですが、先日居酒屋で名刺を交換した清水、清水さきです。覚えておられますか?」「ええ、勿論。枝里子にも連絡したんですか?」「いえ、遠藤さんに最初にご連絡させて頂きました」「あのぅ何かあったんですか?」「ずっと迷っていて、悩んだ末に遠藤さんにお話を伺いたいと思いまして、お時間の取れる日がありましたらお会いできないかと。勿論、先日の捜しているさきさんの件です」「良いですよ。僕は今あちこちの病院で武者修行中でね今日も横浜の東神奈川の病院で勤務があって‥」「東神奈川_私はその近所に住んでるんです。もしお時間があれば!」「良いですよ。勤務は通常5時までなのでなにもなければほぼ時間通りに上がります。明日もこっちなので時間取れますよ」「ありがとうございます。では6時半頃病院の近くへお迎えに上がります」「それより途中で合流した方が早く会えるでしょう?清水さんは、勤務時間は?」「5時15分で上がって駅から東横線で‥」「横浜駅の改札口で待ち合わせよう❗京浜急行で横浜へ出るよ。清水さんも横浜へ出るのは不便じゃないでしょう?」「私は横浜が地元なのでどうやってでも訪ねていきますよ。遠藤さんが都合の良いようにしていただいて結構です。」「夕飯も摂りたいけれどなかなか独りで横浜に出る気がしなかったからチャンスなんだよ?」「よろしいのですか?本当に」「うん勿論。できればうまい飯屋さんを教えてほしいんだ」「分かりました。では横浜駅西口で6時頃でよろしいですか?」「改札口の出口一緒だっけ?」「西口を出たら交番があるのでその周辺でいかがですか?」「オッケーわかった。遅れるようなら連絡してね。」「はいよろしくお願いします」電話を切ってから枝里子にも連絡をと思っていたが、医局から呼び出しでそのままになった

そして約束の6時少し前に保が到着。さきも6時丁度に到着した「お待たせしました。遠藤さん」「いや時間通りですよ。僕も5分前についたとこ。うろうろする時間もなかったよ」「では行きましょうか。」さきは前になって歩き始める。「遠藤さんこちらへ」さきは地下街を迷い無く歩き時々保が着いてきているか振り返った「並んで歩けば清水さんが振り返らなくて良いんだな」とさきと並んで歩いている「今日は佐々木さんとご一緒ではないのですか?」「あっ忘れてた。清水さんと会うの連絡するつもりだったんだよ。今から掛けるか。」と携帯を取り出すと「あのう、お話が済んでからではいけませんか?」「ええ、清水さんがそう言うなら良いですよ。近くにいたらばったり会う事ってあるしね」「佐々木さんとはお付き合いをしてるんですね?」「付き合うって。言うか幼馴染みで近所に住んでて腐れ縁ですよ」「でも今私と二人きりで会うことに佐々木さんを気にしてるでしょう?」「まぁ正直言うとこのまま一緒になると周りも僕も思っています。でも枝里子は好奇心が強くていつ僕意外の男の魅力に引かれるか、僕から離れていくか分からないんです。」「佐々木さんってかなり気が強い方なんですか?」「我が儘ではないと思います。でも職業柄強固にでないといけない事が多くて自然とああいう態度に」「理解してあげられるんですね。」「子供の頃からずっと見てきましたからねぇ」「そうですか羨ましいですわ」ずっと歩き続けて立ち止まった店は和定食の店だった。個室は、きちんと区切られた部屋だった。「お任せいただいても?」「ああよろしく」さきは部屋に案内されるとすぐに席を立って注文をしているようだ。ウーロン茶を二つ抱えて戻ってきた「ああありがとう」「ビールでも良いんですけどお医者様って呼び出しがあるとまずいでしょう?」「お気遣い頂いて恐縮です。でも宿直もいるので大丈夫ですよ」「ではビールを注文しますね」そう言うとさきは瓶ビールとコップを二つ手にして戻ってきた「わざわざありがとう」「いえこのお店は大学の時にアルバイトでお世話になったところで馴れてるんです」とにっこり笑う「つい自分で運んじゃうんですよ。」「失礼します」スタッフがお通しやら料理を運んでくる「サラダと天ぷら定食にしました。お嫌いなものはありませんか」「大丈夫好き嫌いはないから。」「さすがドクターですね」「この店は襖が開いているときはスタッフが出入りしますが襖が閉まっていると誰も近づかないと言うルールがあるんです」「へぇそこでいっぺんに届いたんだ」「ええ、温かいうちに食べちゃいましょう」「じゃあ戴きます」二人とも手を合わせて箸を取る「美味しいですね。サクサクして温かいから余計に美味しく感じる」「結構の人気のあるメニューなんですよ。働いてた人間が進めるからね」さきはニッコリ笑う「食べる前に手を合わせるのは昔から?」「ええ、普通だと思いましたけれど?そうじゃないですか?遠藤さんも自然にしてたでしょう?」「僕は、さきちゃんママに教わったんだ。」「あのぅそれって」「先日も話したけれど君は僕達が捜しているさきちゃんのお母さんに良く似ているんだ。僕と枝里子はよくさきちゃんの家にお泊まりしたんだ」「本当に仲良しだったんですね。」「うん。だから凄くショックを受けたよ」「そうなんですか‥」「枝里子は以前は泣き虫でねいつもさきちゃんの後ろに隠れてた気の弱い子だったよ。今は見る影もないけどさ」「ずっと側で見てきたんですね」「言ったでしょう?腐れ縁だって」「とても大事な人なんですね」「僕の話し聞いてる?」「勿論です」

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