6



 辺境伯の城に戻ってくるなり、ミアはここ数日ですっかり顔見知りになった使用人達に囲まれた。


「ああ、良かった。無事だったんですね! こんなに血みどろになってしまって。可哀そうに」

「心配していたんですよ。さあ、まずはお風呂に入ってきれいにしましょう。手伝ってあげますから!」

「着替えも用意してありますからね」


 隣に立つローラントそっちのけで話が進む。手紙を残していったものの、一体どこまで話が広がっているのか分からず、ミアはあたふたとしつつも答えた。


「お風呂は一人で入れますから!」

「せっかくだから手伝ってもらえばいい、ミア」


 ローラントはくすりと笑って、ミアの手をゆっくりと離す。

 ――ミア。

 当たり前のようにその名で呼ばれていることに、今更ながら気づき、面映ゆくなる。


「疲れているだろうから、ゆっくりするといい。俺もさすがに、この格好では。締まらないしな……」


 ローラントはため息をついた。血染めのシャツとベスト、泥にまみれた外套とブーツ。それが、あの戦いの激しさを物語っている。


「本当は今すぐにでも話をしたいが、後にする」

「話……」

「そう。言っただろう。今度は逃げずに、最後まで俺の話を聞け」


 ミアはびくりと肩を震わせる。

 考えないようにしていたことだ。

 いいことでも、悪いことでも、ローラントからの言葉を受けるのが何故か怖い。心臓がひっくり返りそうだった。


「支度が終わったら、ミアを団長室に連れてきてくれ」

「承知しました」


 ミアの不安をよそに、ローラントは足早に立ち去っていく。


「さて、腕が鳴りますね~」

「ええ。なんて言ったって素材がいいもの」


 早くこちらへ、と背中を押される。

 あれよという間に大浴場までやってくると、準備に時間がかかるからこれでも食べて、とクッキーを押し付けられる。焼きたてのようで温かく、甘い匂いがした。

 歯ごたえはさくさく、中にナッツが入っていた。


(これ、おいしい……)


 食べる手が止まらなくて、あっという間に器が空になる。そうこうしているうちに準備が整い、服を脱がされ広い風呂場に放り込まれた。

 大理石の床、ライオンの口からとめどなく出る湯。浴槽にはたっぷりと湯が張られ、室内は蒸気が立ち上って暖かい。

 本来辺境伯とその家族、または賓客のみが使うことを許された浴場だ。使用人が裸で踏み入っていいところではなく、ミアは目を白黒させた。


「大丈夫ですか? お叱りを受けませんか?」

「もちろん。全ては辺境伯のご命令ですから!」

「辺境伯の……?」

「はい! 戻ってきたら丁重にお迎えするように仰せつかっておりますよ!」


 動揺している間にも、使用人達はてきぱきと手を動かす。

 ミアの体を隅々まで洗って、肌を磨き、背中や腰回り、四肢をマッサージしつつ香油をたっぷりと塗り込む使用人達は実に楽しそうだった。


「やっぱり若いからですね、きれいな肌をされているわ」

「本当、吸い付くみたいで気持ちいい」


 しかし、ミアはいたたまれない。

 荷馬車の中で転がされていたせいか、肌のあちこちに打ち身の痕があった。傷ひとつなくたおやかな深窓の令嬢とはほど遠くて、見られるだけで恥ずかしい。

 短い髪はどうやってもアレンジできず、花の香りがするオイルをわずかにつけてから、風を当てて乾かし、ふわりと匂いを漂わせた。せめてこれだけでも、と耳の後ろに白百合の飾りをつけて、久しく無縁だったドレスを着る。

 痣が見えないようにして欲しいと言わずとも、肌の露出を避けるように、デコルテ周りや腕周りにはレースがあしらわれている。色は淡い青。ハイウエストで、裾が長い。

 着替えたら薄く化粧。

 支度が整ったミアを見て、使用人達は満足げだ。


「これならアレニウス様もご満足でしょうよ」

「我ながらいい仕事したわ」


 めいめい勝手なことをのたまって、着飾ったミアを騎士団室の手前まで連れていく。


「では、私たちはここで失礼いたします」


 そろって頭を下げると、きゃらきゃらと笑って、使用人達は立ち去った。


 ひとりポツンと残されたミアは、呆然としていた。

 こんなに着飾った状態で、どう責任を取ればいいのだろう。


(これで決闘をする……なんてことはないよね?)


 処罰の前に良い夢を見させて、ローラントはどうしようというのだろう。まさか、あげて落とすつもりなのか。

 ぐるぐると考えていると、廊下を通る騎士たちから奇妙な眼差しを向けられ、若い騎士たちは小突きあって、何かこそこそと話をしている。


(やっぱりこの格好、おかしいって思われてるのかも……)


 ドレスは美しいが、髪は短く男の子のよう。ついこの間まで少年従者としてローラントのそばをくっついて歩いていたのを知っているだろうから、さぞや滑稽に映っているに違いない。

 男子が女装をしている、とでも思われているのか。本当は指差して笑い、からかいの種にしたいのだろう。

 ミアはかぶりをふった。数日一緒に過ごしたが、騎士団は皆気のいい人たちだ。ミアを指してあざ笑ったりしない。

 もうどうにでもなれと扉をノックする。

 すぐに返事があり、ミアは震える手で扉を押し開けた。


「……団長閣下、ミアです。お待たせいたしました」

「…………っ」


 室内は薄暗い。執務用の机には、手元を照らすランプが一つ。灯りはそれだけだ。

 ローラントは何も答えない。

 両目を大きく見開いて、猫のように音もなく滑り込んできたミアをまじまじと見つめた。

 ――暗がりで、その表情は読めない。


「……なんて……できる子たち……っわいい」


 ――よく聞こえなかった。

 あまりにも準備に時間がかかりすぎて怒っているのだろうか。それとも、少年のふりをしていたミアが急に女の格好をしてきたから、呆れているのだろうか。

 少年好きのローラントから好印象を得るには、男装のほうがよかったのでは?

 思ってから、うつむいた。


「――閣下。勝手をしたにもかかわらず、助けていただきありがとうございました。もう二度と相まみえぬと誓っておきながら、さっそく破ることになり申し訳ございません……」

「……随分と堅苦しいな」

「――わたしは、これでも分別のあるおとなのつもりです。いくら従者として数日を共に過ごしたとはいえ、閣下相手に無礼にも馴れたりいたしません」


 こどものふりをして匿ってもらっていた手前、それらしく見えるよう甘えた振る舞いをしてきたが、本来はこの距離感が適切だ。それくらい、ミアにもわかる。ましてや、ローラントが忌むナイチンゲール。気安さは捨てた方がいい。

 ローラントは氷の眼差しを細めた。


「まるで、もう無関係だとでも言いたげだが。何のために連れ戻したと思っている?」

「責任を取らせるためかと……」

「それは分かっているのか……」


 ローラントは額を抑え、ため息をつく。


「話というのはそのことでお間違いありませんよね」

「……ああ。だが、閣下は駄目だ。これまでのように、名前で呼んで欲しい」

「お望みであれば、そういたします」

「望みとかそういうんじゃ……ああ、クソ。調子が狂う」


 ローラントは低く唸った。

 調子が狂うのはミアも同じである。

 だが、どうすればいいのか分からない。

 ローラントは多分、真面目な話をしようとしているのだし。


「本題に入る前に、色々確認させてほしい。いいか?」

「もちろんです」


 ミアは緊張しつつ頷いた。


「何故ずっと正体を隠していた?」

「……本当のことをお話しすれば、怒り狂って処罰されると思ったので」


 ピアニッサでローラントを眠らせたのは失敗だったと今でも考える。そもそも、絶対に眠らない自信があると豪語したのはローラントだ。それが、聖歌の一節を聞いただけでうとうとして、本来最後まで詠唱せねば寝ないところ即寝落ちた。信じられないことだが、ミアの聖歌への耐性が驚くほど低かったのだ。

 屈辱と怒りをおぼえるくらいなら、安易に眠らせるべきではなかった。


「処罰……」


 ローラントは苦虫を噛みつぶしたような顔をした。


「俺がミアを、激情に身を任せて処罰すると思って言わなかったのか?」

「はい。痛い思いをするのも、傷付くのも、もう嫌だと思ったので」


 もう何も隠す必要はない。正直に答えると、ローラントは深刻そうにつぶやいた。


「痛い思い……だと?」

「ここまで、すべてを捨てる覚悟を持って逃げてまいりました。……何もかも、限界だった。逃げた先でまで、痛い思いはしたくなかったのです」

「ミア……」

「鞭打ちか、引き廻しか……何にせよ、そういう罰を想像していました。責任を取らせるというのは、そういうことではないのですか?」


 むしろ、それ以外で一体どうやって責任を取るというのだろう。

 指輪は返した。氷槍も出せる。

 ローラントが懸念していたような事態はこの先起きないだろう。

 もう魔物が何匹出てこようが大丈夫。武器が壊れても心配ない。

 それでも責任を取れ?

 ――分からない。


「はあ……。もう、全部俺が……。言葉の選び方が下手ですまない」


 何故かローラントはひどく落ち込んでいた。


「要するにミアは、処罰が怖くて黙っていた、と」

「……はい。それだけではありませんが」

「他の理由があるのか⁉」

「ローラントさまは少年がお好みでしょう――」


 言ったところで、ローラントは勢いよく立ち上がった。反動で椅子が倒れる。


「それこそ誤解だ!」

「誤解……? ですが、町のきれいな女の子たちには、全然興味を示さなかったでしょう? それでいて……少年ばかり目で追っていましたし」

「あー……それはだな」


 ローラントは言いにくそうに口元を抑えた。


「確かめていたんだよ。その……俺が、少年愛に目覚めてしまったのか……」

「…………なるほど」


 ミアはにじりと後ずさる。ローラントは慌てて付け加えた。


「それではっきりしたのだ。俺は別に目覚めたわけではない。ミアムだけだ。俺の全てを狂わせるのは最初から、お前だけだったんだ、ミア」


 ――少年が好みだったわけではない?

 胸がざわりとした。

 上目遣いでローラントを見上げ、ミアは声を震わせてたずねた。


「わたしが少年のふりをしていなくても、好きになってくれましたか?」

「少年であろうとなかろうと、ミアを愛おしいと思う気持ちは変わらない」


 言いつつ、ローラントはゆるりとミアに近づいてくる。

 ローラントも風呂に入った後だろうか、身綺麗になっていた。ただし、完全に休日らしく、いつもの騎士服ではない。白いシャツに黒のベストとパンツ。脚が大変長い。

 シャツの隙間から覗いた身体は逞しく、いけないと思いながらも目で追ってしまう。


「好きだよ、ミア。だから、対象外だなんて言うんじゃない」


 真っ直ぐな言葉に鼓動が跳ねた。これは酔っ払いの戯言ではない。正真正銘、正気のローラント・アレニウスの言葉だ。そう思うと、腹の底がひっくり返りそうな感覚になった。

 ミア、と甘い声でささやかれるたびに胸は高鳴って、この上ないほど満たされる。


「……っわたしはあなたが話題にもしたくない、あのナイチンゲールなのに?」


 ローラントはため息をつく。逃げ場をなくして壁に背を預けたミアの手を取って、低く答える。


「ああ、それも誤解だ……。好きな人の前で、不誠実にも他の女の話なんぞしたくなかった。面と向かってミアムに好意を告げられない分、誠実であろうと……まあそれも、全てが裏目に出ていたわけだが……。俺は深い眠りを与えてくれたナイチンゲールにもう一度会いたくてたまらなかったし、感謝こそすれ、恨んだりはしていなかったのだが」


 情報の多さにミアは戸惑う。

 つまり、全てがどこかでずれていて、ずっと誤解していたと?

 何度も目を瞬き、ローラントの言葉を噛みしめる。頭の中に染み入ってくると、これまでのことが思い起こされて恥ずかしくなり、ミアは顔を赤らめた。

 ナイチンゲールは、嫌われていなかった。

 最初から……――。


「では、その、責任を取らせるというのは……一体――」


 ローラントはミアの手を取って、その甲にキスをした。


「俺に安易に安眠を与えて奪ったこと、俺の心を根こそぎ持っていったこと、その上何も言わずに出て行き俺の心を殺しかけたこと……とにかくあげればきりがない。責任をとって、この先何があっても離れず、一生涯共に歩むという人生契約をナイチンゲールと結ぶべきだと思ったわけだ」

「……人生契約?」

(……何それ、要するに結婚? いや、さすがにそれは飛躍しすぎだよね……)


 ミアは乾いた笑いをもらした。結婚は、ただミアの願望である。

 高望みはしない。追い出されなければそれで。この際、愛妾だろうが何だろうが構わなかった。

 ローラントはミアの腰を引き寄せた。片手がミアの頬を滑り、上向かせるように顎の下に手を添えられる。


「分からないか? 俺は最初からただ一人を欲しいと思っていた。それはもう、どうしようもないくらい――。ミアは、俺の全部を狂わせた。その責任を取って欲しい」


 答えを聞かせてミア、と溶けそうなほど甘い声が囁いた。

 その呼び声に、どうしようもないほど胸が締め付けられる。否、とはとても言えない。

 ローラントの氷のような瞳の中に、色欲に濡れた瞳のミアが映っている。

 答えの代わりに、ミアは唇を引き結んで背伸びをし、ねだるようにローラントに腕を伸ばした。

 


 ◇



 ――夕方。

 城塞都市の北東にある御殿に、荷馬車が停まった。

 その御殿はとある豪商が建てたらしい。真っ白い外壁に、金の装飾が施されたドーム型の屋根は大変目立つ。

 ただし、長いこと主は不在だった。たまに人の出入りがあるものの、商品の運び入れは見たことがないと近隣の人々は証言している。

 その立派な御殿に、珍しくあかりが灯っていた。

 それもただのあかりではない。白い閃光である。それは、転移陣が発動した時に見られる光だが、一般庶民は知るべくもなし。

 その転移陣から意気揚々と現れたのは、長い法衣を引きずって、贅肉をたゆんとゆらした男――ピアニッサの神官クズィーである。

 彼はかつてないほど機嫌がよかった。

 時間はかかったものの、ミア・セレナードをついに捕らえた――その報告を受けていたからだ。


「ようやく来たか、まったく、やきもきさせおって」


 クズィーはおもむろに荷馬車へと近寄った。

 これほど手を焼かせてくれたのだから、憂さ晴らしにミアを惨めな気持ちにさせてやろう。一言二言責めてやれば、あの娘は委縮して頷くばかりの小鳥になるのだ。

 小鳥を一匹飼っているだけで、真面目に働くのが馬鹿ばかしくなるほどの大金が舞い込んでくる。

 地道に活動してこの地位についたクズィーを嘲笑うかのように、湧いて出てきた小娘のほうが価値も立場も上だった。

 だが、それを認めるのは男のプライドが許さない。

 だから徹底的に刷り込んだ。

 皆が歌い手を敬い頭を垂れるなか、あの小鳥だけはクズィーを恐れてひとり、民衆の前でうつむいていた。

 第一声をどうするか思案しつつ、幌を開けてクズィーは腰をぬかした。


「なっ、なんだ貴様らは!」


 現れたのは、金を握らせた傭兵ではない。

 白い騎士服に身を包んだ清廉そのものの騎士たちである。それが荷馬車から次々と飛び降りてくる。その身を包む外套は、フォルデ辺境伯の紋入りだ。

 ――氷槍のアレニウス率いる、辺境騎士団である。

 クズィーはそれを察して震えあがった。

 最後にゆるくうねる紫紺の髪が特徴的な若い女が下りてくる。襟に階級を示す星が二つ。士官以上の階級なのは間違いない。

 彼女は冷ややかにクズィーを見つめ、淡々と告げた。


「ピアニッサの神官、クズィーだな。聖歌機関の要請を受け、貴様を連行する」

「なっ――何だと⁉」


 動揺する神官を騎士たちが取り囲み、手際よく縄をかける。

 クズィーは顔をどす黒くして叫んだ。


「何かの間違いだろう! 一体わしが何をしたというのだ!」

「何をした、だと。自分のしでかしたことを理解していないのか」

「しでかしたことだと?」

「そう。ナイチンゲールへの仕打ちだ。覚えはないか」

「仕打ちだなどと。わしはただ、歌い手を連れ戻そうとしただけだ」


 へえ、と女は冷笑を浮かべる。


「ピアニッサの至宝を、汚い手を使って連れて行こうと? この下衆が」

「馬鹿め、あの小娘は逃亡者だ! 多少の強引さは必要だった」

「多少? 市場で発砲したな。それも必要だったと? 当たり所が悪ければ、最悪命を落とすのだが」


 クズィーは言葉を詰まらせた。


「異国の騎士団にとやかく言われる覚えはない! わしはピアニッサの神官だぞ!」

「安心しろ。辺境伯を介し、正式な礼状をいただいている」

 

 女は丸めた羊皮紙を広げてみせた。クズィーは一気に青ざめた。


「そんな、嘘だ……っ」

「あんた、見苦しいな」


 ひとりの騎士がため息をついた。彼もまた、襟に二つ星。栗色の頭を掻いて、呆れたようにクズィーを見下ろす。


「あんなに健気で可愛いミアちゃんを必要以上に追い詰めて、怖い思いさせて。何も間違いなんかねえんだわ。というか、うちの団長、切れ散らかしてるから、あんまり手を焼かせないでもらえます? しっかり仕事させてもらわないと、後でぼこぼこにされるの俺たちなんで」

「そう、歌い手は我々フォルデ辺境騎士団が責任を持って御守りすることになった」

「なんと勝手なことを!」


 クズィーが喚けば、女は我慢ならずに剣を抜いて、切っ先をその喉元に突きつけた。


「勝手はどちらだ。手段を選ばずにミアを連れ戻そうとしたこと、到底許される行いではない。今回の件を知った聖歌機関も相当お怒りである。とにかく、貴様の身柄を引き渡して欲しいというのが、聖歌機関のご希望だ」


「そんな馬鹿な……ミア・セレナードを連れ戻せと言ったのはあの方々で――」


 連れ戻しさえすれば、ミアの逃亡を許した件と、それについての処罰をどうするか、考えてくれると。確かにそう言っていたではないか。

 無傷で連れてこいとは言わなかったはずだ。

 聖歌さえうたえれば、どんな状態でもかまわないと内心思っているくせに、フォルデが歌い手を保護したと知った途端に臆したのか。

 愕然としてその場に崩れ落ちたクズィーの背中を男が蹴り飛ばした。


「あーもう。うるせーからはやく連れていけ。そうしないと、俺たち団長にミンチにされちまうぞ」

「くそ、こんなことをしてただで済むと思うな――」


 縄で縛り上げられるクズィーに騎士は笑った。


「おい、おっさん、氷槍のアレニウスに喧嘩売ろうとしてるのか? やめとけよ。ミアちゃんのこととなると、あの人マジで周りが見えなくなるから。宝剣でぶん殴られたら、首飛んじまうぞ? 今回のことだって、自分でしばき倒すって言い続けてたのをどうにか抑えてきたんだ。あの人が介入したら、絶対おっさん死んじゃうじゃん。撲殺されるか、氷漬けになるか、串刺しになるかは知りませんけど、そのどれかだよ。それは、聖歌機関との約定に反しちゃうわけですよ。だからさ、おとなしくしといてくれる?」

 

 氷槍のアレニウスがミアの味方についている――。

 それを聞いたクズィーは、抗う気力を一気に削がれた。

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