第2話 手記その1

 手記、その一


 証言者 バルク・ハスラー元修道士




 過去の経歴はすべて洗い流したつもりでしたが、よく私だとわかりましたね。




 ええ、彼女のことはよく覚えていますよ。


 しかし、貴方の質問にお答えすることはできません。




 わざわざ来ていただきましたが、すべてが終わった今でも、多くを語ることはできません。


 なぜなら、彼女の耳は噂話を聞き逃さず、彼女の目は正確に獲物を射抜くのですから。




 老い先短いこの命だって、保証されたものではないのです。


 ただ、せっかく来ていただいたのです。




 一つ証言をするとすれば、


 彼女は人の姿を借りた異物。




 まぎれもない化け物でした。

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