第33話
ウィスタリアは見ていた。あの重いモヤモヤは魔石に魔法水を掛けられるとゆらゆらと左右に動き、バチバチと音を立てて消滅した。それはまるで人が悶え苦しんでいる姿の様に感じられた。
ウィスタリアは人が苦しんで死ぬ場面を見せられているようで気分が悪くなった。早くここから去りたいと願った。
弾け飛んだ真っ赤な血のようなジュエリーボックスにまた気分が滅入った。あれはミザリー婦人のものかもしれないかと思うとまた萎えた。
早く帰りたいと願っているウィスタリアは父か兄が戻ったら帰る事を告げようと騎士に馬車の手配を頼んだ。
「少し気分が優れないので父か兄のどちらかが戻り次第帰宅します。馬車を用意して貰えますか?」
「確かにお顔の色が悪いですな。すぐに用意をさせましょう」
そんな会話をしていたところ、ウィスタリアは何か気になったのか振り向いた。振り向いた先には散らばった魔法水が床に残っていた。その散らばった魔法水の近くに何やら集まっている気がする。集中して見ていると集まっているのは魔石のあの重いモヤモヤだった。
しかし、魔石はジュエリーボックスに入れられて今は陛下の手に渡っている。
次第にその重いモヤモヤは大きくなっていった。
「ウィスタリア様?大丈夫ですか?お顔が真っ青ですよ。こちらの椅子にお座りください」
騎士がウィスタリアに言うも、ウィスタリアはモヤモヤから目が離せない。
キレイに浄化されたのかと思われたネックレスは、砕けて封印された。しかし、魔石の中に残っていた魔素は解き放たれた形となった。もしかしたらその魔石で封印出来ていたかもしれない邪悪なものを魔法水で解き放たれてしまったのかもしれなかった。
ウィスタリアはガタガタと震えた。そのモヤモヤは急速に集まり何かの形になっているように見えた。それは人の形に見えた。先ほどの魔法水で浄化されている時にも感じた事がまたも起きた。
そして、今まさにそれは目の前で起こっている。それは感じるのではなく人になっていく過程をウィスタリアは見ていた。今までモヤモヤと見えていたモノが等々人の形になっていった。
人の形をしたモヤモヤだったモノは若い成人男性として空中に浮いている。宙に浮いている若い男性は美しい金色の髪をしてた。そしてウィスタリアから見える彼の横顔は整って見えた。最近になって見た事のある顔だった。
図鑑に載っていたあの肖像画の吸血鬼アンドレ・ホルスターだ。
息が上がるウィスタリアを見かねて騎士が話しかける。
「どうされたのです?!」
ウィスタリアは何が起きているのか分からなかった。
そして、恐れていた事が起きる。目を閉じていた彼の瞳がそっと開いたのだ。開いた瞳はマリンブルーのように明るい青色だった。そして、ゆっくりとウィスタリアの方に向く。ウィスタリアは恐ろしさのあまり声が出なかった。そしてそのままその場に倒れてしまった。
夢であってほしい。私にしか見えない吸血鬼アンドレ・ホルスターが現れた。私は平凡な幸せな結婚をして過ごして行きたいのだ。お願い夢であって…
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ここまで読んで下さりありがとうございました(´▽`)
良ければ感想などあると嬉しいです。少しお休みをさせて頂いて再開したいと思います。
よろしくお願いいたします。(^^♪
ウィスタリア・モンブランが通りますよぉ 桃野もきち @saran21
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