第9話
「ウィスタリア!今日はゴミの回収日だよ!まだ終わってないのかい?しっかりおし!!」
「あ~!すいませ~ん。今からやりま~す」
メイド達が集めた各部屋のゴミを女中のウィスタリアが回収する。これもすぐ忘れる。回収されたゴミは城の裏の竃の肥料になるかそのまま燃やされる。
魔力が激小のウィスタリアは燃やすのも一苦労だ。マリアが火炎魔法で一瞬で出来る事をウィスタリアは数分掛かるし魔法を使うとその1日は使い物にならない。なので魔力を使わず普通に火を起こし、燃やしている。変に魔力を使うと疲れてしまうのだ。
今日も燃やすためだけに午前中を使い切ってしまったウィスタリアはマリアに呆れられてしまうのだが、毎度の事なのでもう慣れっこだ。
お昼前にやっと終わり、顔を煤だらけにして畑に訪れた。レモンナスの確認をしようと思ったのだ。朝、畑に向かおうとしたらマリアにどやされた訳である。いつも午前中まで掛かるのをマリアは分かっているので発破をかけたのだ。
「あ、トム、畑はどう?」
畑の管理をしているトムだ。歳は40代くらい。トムはあの件以来裏の畑を管理してくれる事になった近所の農家だ。
「よう。ウィスタリアじゃないか。相変わらずどやされてたな」
「ええ、相変わらずよ」
「こっちも相変わらずいい実りだよ。もうすぐ冬だから閉鎖する事になっているがね。春までさよならだ」
「この中にレモンナスってなかった?」
「ん?あるよ。あれは城の魔導士たちが持ってっちまうがね。レモンナスがどうかしたのか?」
「あ~えっと、城のテイマーからレモンナスがないかと聞かれたのよ。あれば分けてほしいって…」
「テイマーがレモンナスを…?」
「?どうかした?」
「ん、いや…じっさまがな、昔、話をしてくれてな。テイマーがレモンナスをほしいと言われれば優先して差し上げろって言われていたんだよ」
「へぇ…なぜかしら?」
トムはウィスタリアに近づくと小声で言った。
「神獣様を囲っていらっしゃるってな」
「し、し、神獣様って?」
「だから神獣様だよ。国に繁栄をもたらすと云われている神獣様」
「ええぇ、この国に神獣様なんて聞いた事ないわ。もっと大きな国とかに住み着くものだと思ってたけど…はは」
「大昔にも何かの神獣様がいらっしゃったそうだぞ。じっさまが子供の時の話だけどな」
「そうなの。でも神獣様とレモンナスって関係あるの?」
「ああ、レモンナスは甘くて美味しい。しかも魔素が豊富だろう?神獣が一番好きな食べ物みたいだよ」
「そ、そうなの?」
「ま、じっさまの受け売りだ」
「まぁいい、レモンナスは優先にそのテイマーに送るよ。大丈夫だ。詮索はしないでおくよ。こちとらも命は惜しいんでな」
「はぁ、よろしく…」
ウィスタリアはピアニーというテイマーに届けるように話をして戻った。
一瞬バレるのではないかと焦ってしまった。さすがは年の功だ。しつこく詮索してこないし昔聞いた言葉を覚えていて実行する。農家の鏡のような人だ。トムは頼りになる。
神獣とは幻獣だとも言う。ペガサスの他に、フェンリルやユニコーン、バイコーン、フェニックスなどが存在しているのだとか。まぁ定かではない。どんな神獣がいるのかはその国の世話役のテイマーにしか分からない。テイマー同士の情報交換は神獣のためにしているが他国の事は王族にも秘密である。それは各国の決め事だ。
そして神獣は国に1体しか住まない。神獣同士の仲が良くないのかなんなのか知らないが1体が訪れると今までいた神獣は違う国に行ってしまう。らしい。
繁栄をもたらす神獣は歓迎ではあるがグリフォンやバジリスクなどの戦いの特価した神獣もいる。そんな神獣は国を破壊しかねないので扱いに困る事もある。なのでテイマー同士の情報交換は必須になっているのだ。
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