第8話
「ベゴニアは植物園の方はどうだい?」
「順調ですよ、お父様。栄養剤は思ったよりも需要があるそうで今度各国に演説に行く事になるかもしれません」
「各国?!」
「ええ、そして、上手くいけば援助金も増えそうです」
家族全員が自慢の兄に拍手を送る。
「ピアニーは今はどんな動物を飼育しているの?」
母ビヨンセが末っ子のピアニーに話を振った。
弟のピアニーのギフトはテイムである。どんな狂暴な動物もピアニーに掛かれば可愛らしいペットに変わる。そんなピアニーは城で王族たちの獣魔の飼育をまかされている。
「王族達の獣魔は手がかかる子たちばかりでテイマーと言ってもとても大変なんですよ」
いつもニコニコとしているピアニーだったがいつも以上に機嫌がよさそうだった。
「そんなにカワイイ子が入って来たの?」
ウィスタリアはピアニーになんとなく話した。
「え?姉さまはすごいな、どうして分かっちゃうの?」
何やら図星だったようで、ピアニーは照れながら話をしてくれた。
「実はね…僕…気に入られてしまって…」
「「誰に?」」
家族の声がハモッてしまった。
「神獣のペガサスに…」
えへへ、と照れるピアニーだ。
「「え?」」
神獣のペガサスから気に入られてしまったピアニーはペガサスのお世話係として就任にしたのだと嬉しそうに言った。ペガサスは気ままな神獣だ。また神獣とは気ままなものだというのは常識だ。行きたい所に行き、住みたい所に住む。
色んな国を飛び回り居着いた国には繁栄をもたらすといわれている。そんな貴重な神獣の世話役をピアニーがしているというのだ。
「す、すごいじゃないか!ピアニー!!」
「お父様、声が大きいですよ」
「すまんな、びっくりしてしまってな…」
「いえ、でもこれは秘密事項なので他で話はしないでくださいね」
「え、そんな事を私達に言っても大丈夫なの?」
「まぁ本来はダメなんですが、家族にはという暗黙の了解というのもあります」
「ではこの話は家族の茶会でのみという事かの。ビヨンセや自慢したいからと婦人会で言うのではないぞ」
「まっ分かっていますわ。でも…」
「「ダメですよ!」」
「分かっています…ふう」
やはり母親というのは息子の自慢をしたいのだろうと思う。気持ちは分からないでもないがこれは国家機密にもなる。噂が広まれざ罰があるかもしれない。
茶会はその他に父の仕事の事、母の婦人会での話に恒例のウィスタリアの見合いの話になる。近況報告も終わると茶会も終了となりそれぞれ帰宅していくのだ。
貴族街にある自宅から城に戻る4姉弟は同じ馬車で城に戻る。先にベゴニアとバイオレットを降ろし、次はピアニーだ。住んでいる所が馬屋と近いウィスタリアは最後だ。
「そういえば姉さまは城の畑でフルーツを育てていましたよね?」
「兄さまが栄養剤の残りを下さったから育てられているだけよ?何かほしいフルーツでもあるの?」
「ウィリーはフルーツが好きなんだ」
「ウィリー?」
「ペガサスだよ」
「ウィリーっていう名前なの?私に言っても大丈夫?」
「ウィリーは僕が勝手に付けた名前だよ。神獣様とかペガサス様とか言いにくいでしょ?」
「そ、そうね…」
勝手に付けていいのか…神獣様がお許しになっているのであればいいのか…
「で、ウィリーはレモンナスが好きなんだ。畑にないかなって」
「買って貰えばいいじゃない」
「今は季節じゃないからどこにも売ってないんだ」
「兄さまに言った方がいいんじゃない?」
「兄さまはもう王族に近い人だよ。結婚も王族の人になっちゃうじゃない?そんな方にフルーツが欲しいなんて言えないよ」
そういうあなたももう王族に近い人だと思うけどね…
「レモンナスは確か…あったと思うわ。レモンナスはポーションの原料にもなるからって兄さまが苗を持ってきていたと思うから」
「本当?ちょっと分けて貰えると助かる」
「もちろん、ちゃんと育てて届けるわ」
「ありがとうございます。姉さま」
ピアニーが馬車から降り、ウィスタリアが馬屋からそのまま部屋に戻ろうとした所にバンがいた。バンは何やらコソコソとしながら誰もいない馬小屋に向かっている。ちょっと馬小屋を覗いて見ると王妃がいた。
ぎょっとしたウィスタリアは何も見なかった事にした。
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