食事

 いわゆるお焼きを持ってきてくれたルビーのお母さん。

 お名前はスルクさんと言うらしい。


「頂きます……食べづらいなぁ。お箸も持てないし。はぁ……」

「お箸ってなぁに? シロンちゃん私が食べさせてあげようか? 」

「いえ結構です。お恥ずかしい。頑張って行儀よく食べれるようになります」


 俺は前足で皿を抑えつけて、口でガブリとする。

 手を洗っていない。食事の前に手を洗いたいけど今はお腹が空いていてそれどころじゃない。


 お焼きを頂き終わり落ち着いた。ようやくスルクさんにお話しが聞ける。


「ご相伴に預かり有難うございます。美味しかったです」

「はいよ。それで何から話そうかね」

「出来ればこの世界の事とか、俺の能力とか召喚獣とか色々教えて頂けると……なにせ元は人間だったので」

「元は人間? それは本当かい? そんな話聞いた事ないけどね。あんたが普通の召喚獣じゃない事は確かだけど」

「普通の召喚獣は俺みたいな感じじゃないんですか?」

「ああ。本来は召喚獣を出し続ける事は出来ない。契約後必要な時に呼び出さないと

魔珠力が尽きてしまうからね。あんたも虫出して気絶しただろう?」


 ……セミを呼んだら気を失ったのはそのせいか。


 スルクさんはこの後この世界の事を多く語ってくれた。


 この世界の事、召喚獣の事、召喚士の事、俺の事

 そしてルビーの目的についてを。


 この世界はアールデルと言う世界らしい。

 複数の大陸から成り立ち、世界は魔珠により便利に生活している。


 ここはランスという大陸の中にある小さな村でシフォン村というらしい。


 シフォン……美味しそうな名前だ。ケーキの中では格別に好きなケーキだ。


 召喚獣は無数に存在し、契約を結べれば晴れて召喚士! 

ではなく、国々にあるギルドへ

登録して初めて召喚士になれるそうだ。


 つまりルビーはまだ見習い。


 召喚獣契約出来たはいいものの、こんな小さな村にギルドはない。


 俺の傷が癒えたらショートという町に行ってギルド登録をするらしい。


 召喚士は世界に多く存在し、ルビーはスルクさんの実の子供じゃないらしい。


 彼女はそれを知っているが、本当の母としてスルクをしたっている。


 目指すは召喚士ギルドの頂点、紫電の召喚士になる事……らしいが俺の力でそんな大それた肩書に慣れるか

正直不安である。


 肝心の俺についてだが、種族はウルフィ。今はリトルウルフィという状態らしい。

 未成熟って事かな。

 どんな種族か聞いてみたが、スルクさんにも解らないらしい。


 初種族の場合は登録も必要なのでまずはショートの町を

目指さないと。


「もしかしてステータス画面なんて、見る事が出来ます?

……その、鑑定でしたっけ? あれで」

「ルビーを呼んで来れば出来るよ。ルビー! こっちにおいで!」

「はーい!」と遠くから声が聞こえる。バタバタとやって来て

俺にダイブする。

「シロンちゃんどうしたの? もうすぐ身体洗う準備が出来るよ!」

「あ、それじゃあお風呂に入ってからで」

「お風呂ー? シロンちゃんはお風呂っていうので身体を洗うの?」

「風呂が無いだと!? ああ、パンに続いてお風呂まで……俺の楽しみがー!」


 再び俺は後ろ脚から崩れ落ちる。

「よくわからないけど、それじゃ身体洗いに行ってみよー!」


 ずりずりと引きずられるように俺はルビーの後をついて行く。

 ここで洗うの? 拭く布と桶以外何もないよ? 


「あの、ルビニーラさん? ここに水が無いように思えるのですが」

「しーっ。私を呼ぶときはご主人様って呼んでね!」


 それはちょっとやだなぁ……と思っていたら。


「空を舞う水泡よ、万物ありて大気から水を生成せん。

ウォーターメイク」


 そう呟くとルビーの手先から桶に向けて水が一杯流れ出る。


 驚きのあまり口を開けて見とれてしまう。信じられない世界だ。


 俺もやってみたいと思い真似してみた。前足で。

「空を舞う水泡よ、万物ありて大気から水を生成せん。

ウォーターメイク」


 しかし何も起こらなかった! ちくせう……なんでだ。


「うふふっシロンちゃんには無理みたいね。まだ生まれたてだし適性があればシロンちゃんにも

出来るかもよー? さ、身体洗いましょうね!」


 憧れの詠唱でかっこよく出す魔法に憧れてたのに。魔珠だっけ? 俺には出来ないのかなーと

 ご主人に身体を洗われながらそう考えるのだった。


 この後は戻ってステータスの確認だ。どんな能力があるのだろうか。

 俺が使えるわけじゃないけど楽しみだなー。

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