第4回のお題「深夜の散歩で起きた出来事」

 お題の「深夜の散歩で起きた出来事」をみて、頭を叩かれた思いがした。

 今度はシチュエーションですか。

 だとすると、体験談をもとにしたものか、散歩中に起きたハプニングがいかに予想外のものを選ぶかで作品の善し悪しがわかれそうに思える。

 ファンタジーやSF、ホラーと愛称が良さそう。

 もちろん、ほのぼのとした作品でも描ける。

 ただ、夜中に散歩している状況は特殊。

 不審者扱いされても文句がいえない時間帯である。

 また、都市部なのか田舎なのかでも勝手が異なるだろう。

 利点は、ギャップを作りやすいところか。

 縛りがあるようでいて選択肢が広いお題である。


 犬の散歩をまず却下する。

 つぎに夜のランニングも却下。

 散歩がてらコンビニに行くのも同じ。

 ありふれたシチュエーションである。

 それらを用いて、別なハプニングが起きるのであれば使えそう。

 殺人事件や交通事故を目撃、あるいは震災時の帰宅困難者としての体験談も興味がそそられる内容である。が、思いつきそうだし、体験した人が書いたものに比べたら劣ってしまうので選べない。

 

 大学時代の夜間歩行が思い浮かぶ。

 参加しなければ単位がもらないため、一回生全員強制参加の学校行事と化していた。

 わたしの時は大雨で、台風が接近する中で敢行されたのである。

 雨天決行、中止順延はなかった。

 歩行する際、事故などが起きぬように見張り役として先輩たちが通過地点に配置される。もちろん教師も駆り出される。

 行わせる側も雨には濡れたくないし、事故やけがを起こさせるわけにもいかないため、通常百キロ歩く夜間歩行距離が半分に短縮された。それでも、高低差のある山道をひたすら歩くのだ。

 夜間歩行の趣旨に「山々の緑を観光する」一文が入っていた記憶があるが、そもそも夜に行うのに緑を眺めるなど無理からぬこと。

 加えて実行されたのは、大雨の中である。

 激しく降り仕切る雨のカーテンで視界なんてまともに見えない。

 握りしめる懐中電灯が照らす足元の明かりを頼りに、四十度近くある傾斜を一歩、また一歩と足を前に出しつづけていくのだ。

 折り返しまでたどり着けば、今度は着た道を下っていく。

 そのときには疲労から足が痛く、歩きたくなくても歩かざる得ず、激痛に苛まれながら雨に濡れていくのだ。

 全身ずぶ濡れで、帰り着いたときには足裏やふくらはぎ、膝、腰、と痛くて痛くてまともに歩けない。つぎの日は普通に朝一から講義がある。

 廊下を這い、シャワーを浴びて着替え、腫れ上がった足の痛みにうなされながらベッドに転がった。

 翌朝は、昨夜の雨が嘘のように晴れていた。足の痛みは一週間続き、歩く度に激痛が走って、階段や坂の上り下りは地獄のような日々だったことを覚えている。


 これは、お話ではなく思い出話にすぎない。

 それはそれでいいのだけれども、書いた人しか楽しくない。

 なので却下。

 つぎに、山を歩いている途中で不思議な体験をしたというホラー作品を考える。あれは一体何だったのだろう、では物足らない。

 調べてみると、山でのホラー体験がそこそこみつかる。

 ありふれているのかもしれないと思い、却下した。

 読み終えたとき、たしかに夜中に散歩した出来事だとわかるものを作ろうと考えを改める。

 なにも、散歩している人が事件の当事者になる必要もない。

 最近、飲食店で問題行動を起こしたことをSNSに投稿して、特定されて通報されるニュースを見たことを思い出し、それと関連する内容を盛り込んだ話を作ることを考えた。

 最近の出来事であるし、ネットから特定されるのは誰にでも起きうる話。読者も、自分ごととして受け取ってもらえるのではと考えると、題材としては悪くない。

 そういえば以前、ネットで仲良くなった子が似たような状況に陥ってしまい、警察に相談して事なきを得たことがあったのを思い出す。 おまえのところまで行ってやるぞみたいな書き込みが来て、本当に大変なことになったらしい。

 変わった人がいるのではなくて、誰しもいいことも変なこともしてしまうだけだと思うのだけれども、トラブルに巻き込まれるのは御免被りたいものである。

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