第3回のお題「ぐちゃぐちゃ」
お題の「ぐちゃぐちゃ」を見て、額に手を当てた。
また、難しいものを出してきた。
名詞ではなく副詞。あるいは形容動詞。
オノマトペである。
思いつくのは、ぐちゃぐちゃから連想されるものを扱った話。
泥遊びや粘土遊びが楽しかった、あるいは手ごねハンバーグを作った思い出など。
もしくは、ぐちゃぐちゃからは連想できそうにないものから書き始めて、意外なぐちゃぐちゃにたどり着くという方法もありかもしれない。
そもそも、きれいな言葉ではないので、いかに汚い言葉をきれいなものとして描くのかを、出題者は求めているのかもしれない。
だとすると、ぐちゃぐちゃなものが絞られてしまう。
結果、他の人の作品と被りやすくなるのでは。
つぎに思いついたのは、前衛的に小説をぐちゃぐちゃにする方法。
作品の内容はぐちゃぐちゃの話(または、ありふれた話)を描いておいて、文字の並びをぐちゃぐちゃにする。
すると、一見すると読めないけれども、短い文章ならば文字の並びをかえても読める。
うがった作品を描くのもアリだと考えた。
実際、最初に思いついたのは文章の並びを変える発想だった。
ただ問題があって、誰もが読めるかといえば難しい。
変な文章と判断されれば、読まれない可能性もある。
他の作品との差別化ができても、読者に対して不親切な気がした。喜んでくれるのは、謎解き好きな人くらいだろう。
いっそのこと、ぐちゃぐちゃを題材にしたクイズを作って、クイズの問題文をぐちゃぐちゃに並べ、それを解くという話も考えた。
作るのは楽だけれども、なぜぐちゃぐちゃの問題を登場人物が解かなくてはいけないのか、理由付けが思いつかない。
作る側が面白くても読む側が面白いのだろうか。
あれこれ思いついたアイデアを全部却下し、素直に「ぐちゃぐちゃ」をテーマにした作品を作ることに改める。
作る前、ぐちゃぐちゃに付いて調べた。
オノマトペであり、英語ではミックスアップ。
汚い言葉であり、いいイメージがないため、ビジネスにおいては別な呼び方をするなど、ぐちゃぐちゃについて知識をまず入れた。間違ったことを書かないようにしようと考えたからで、先入観なしに作品を考えたほうがいい場合もあるので判断が難しい。
だから最低限調べた上で、だれもがする判断基準、好き嫌いから書き出すことを思いつく。
机や引き出しの中がぐちゃぐちゃなのが嫌いな性格を主人公につける。そんな主人公なら、整っているのが落ち着くはず。読者から同意が得られそうな内容を書き、主人公の目にはコロナ禍以降大きく変化してきた世界はどう見えるのかを考える。
おそらく、ぐちゃぐちゃに見えるはず。
変化を前に主人公はどう思い、どう行動するかを短編にまとめた。
主人公にとってぐちゃぐちゃとは変化であり、変わることを望んではいない。あるいは大きな変革を求めてはいないのに、世界はどんどん変わっていく。
まるで自分は取り残されるようにして。
だから変わらないでと叫ぶ。
主人公はぐちゃぐちゃが嫌いなのではなく、変わることが嫌いなのだ。
起承転結、プロットを作ってから書き出す。
なんだか私小説っぽい。
あるいはエッセイ、下手すれば小論文っぽさを感じる。
主人公の独白ではなく、行動描写と隠喩で描くのが小説かもしれない。
一人称のデメリットはおしゃべりになることだ。自分自身に対しても無口にすることを心がけたい。
ドラマとは、起承転結を作り込み、その中に人間をダイナミックに追い込んで心の有り様を描くものである。
いささか追い込みが足らない。と、反省しながら自分を追い込んでみた。
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