ぬいぐるみVSメカぬいぐるみ

水城みつは

KAC20232 お題「ぬいぐるみ」

「ウィキペディアによると『ぬいぐるみ』は、

 【東宝の『ゴジラシリーズ』などに代表される、おもに「特撮映画」に登場する、特殊ゴム素材などを用いた、演技者が中に入る形式の怪獣やロボット、宇宙人などの異生物の造形品の、現場における用語】

とも書いてある」

「つまり、特撮ネタは全然オーケーってやつだ」


「なんで君は斜め上な攻め方ばかり狙おうとするかな」

スマホから顔を上げ、彼女はやれやれと首を振った。


「『ぬいぐるみVSメカぬいぐるみ』とかどうだろ?」

元ネタもリスペクトできるし、インパクトもある気がする。


「え、三作もあるの?」

差し出されたスマホの画面を見た。

「『ぬいぐるみ対メカぬいぐるみ』、

 『ぬいぐるみVSメカぬいぐるみ』、

 『ぬいぐるみ×メカぬいぐるみ』、

三作かけるな」

三作もあるとは知らなかった。


「ところで、『本屋』のお題は投稿したのかい?」


「庇を貸して母屋を取られる」

「本屋(ほんおく)ネタでプロットを練ってたんだよね」

風を通すべく隙間を開けていた窓を締める。


「それで?」

ジト目の彼女を見ないようにして答える。

「777文字縛りがなかなか厳しい」

書くからには777文字ぴったりにしたい。

「流行りのAI君あるでしょ、試しに『本屋』のお題で777字ぐらいで書いてもらったんだ」

「どうなったの?」

若干、身を乗り出してきた。

AIの書く作品は彼女も気になるようだ。

「690文字で『本屋の秘密』という作品を一分とかからずに仕上げてきた。それっぽい、そこそこの小説は任せたほうが簡単かもしれない」

作者の個性のない作品ぐらいなら簡単に生成できる時代がきてしまった。いや、作者の個性すら学習するだろう。

「面白くなってAI君の作品を読んでいたら締め切りをすぎてた」


部室の電気を消し、鍵を閉める。


「明日は休みだし執筆に専念したまえ」

彼女は私から鍵をとりあげ、手を振りながら去っていった。




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ぬいぐるみVSメカぬいぐるみ 水城みつは @mituha

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