第6話 切る斬るキルキラー

ゴブリンたちの攻撃が届こうとしているのにキジコの身体は全く動けなかった。


『うじゃわぁあぁぁあぁああ!!? 』


思わずキジコは叫んでしまった。


斧で斬り付けられようとする



『ウギャつっ..!?』


突然ゴブリンたちが木っ端微塵にされた。ゴブリンたちはその場に落ちる


『ダメだな、ダメダメだなぁ女神』


斬られる直前に桃太郎がゴブリンたちを倒したのだ。


『...桃寺』


『全然物怖じしているじゃないか。』


『それはそのじゃ...』


桃太郎本人がどう思っているかは知らないが、また助けられた


『それはそうと女神、そいつは女か。ほうやっぱりラノベ通りだったか。なんつーかまぁ悲惨だな』


生気を失いまるでゾンビのようになった女性、ゴブリンの仕業である。


『女神、回復魔法を使えるならその人の回復に勤しんでくれ。』


『それはいいがワシはまだ...』


キジコはまだ物怖じしている。今だってそう、ゴブリンの怖さと自身の無力さに身体が震えている。


『焦るな女神、生きている限りはいくらでもチャンスはある。今はできなくともいつか覚悟を決めて達成すればいいだけだ。』


『いつか、か...』


仮にも桃太郎は戦闘において強い、キジコは彼の言葉を受け入れた


『この洞窟はかなり入り組んでいる。俺たちとアダムはどうやら違う地点にいるはずだ。どこかで奴は今頃戦闘を行っている。俺はやつの所へ行こうと思う。』  


『はぁ!?それじゃワシ1人になるじゃろ、ワシ戦えんのじゃぞ』


『戦えないことを自慢げに言うでない。大丈夫だ、おまえの助っ人としてアダムのパーティから1人借りてきた、あの全裸がレディファーストでよかったぜ』


桃太郎がそう言うと後ろから短剣を持った女の子が現れる。


『はじめましてマウリです。よろしくお願いします』


女の子がおじきをする


『よ、よろしくじゃ』


キジコも挨拶する


『じゃあ俺は暴れてくるわ、女性の看病を頼む』


そう言うと桃太郎は暗闇の中へ消えた。



  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



『グギャアァァにぁあア』


数十匹のゴブリンの集団が変態に牙を向く。その変態ことアダムは余裕の笑みを浮かべながら独特なポーズをとっている


『醜く憎たらしき哀れな小鬼たちよ、僕が君たちを光の塵とかしてあげる』


アダムがそう言うと洞窟の天井に黄色く広大な魔法陣が開く。


『shining rain 』


すると魔法陣からレーザーの雨が範囲内のゴブリンたちを襲った。雨のごとく降り続けるレーザーはゴブリンの肉を削る。そしてゴブリンたちは次々と倒れる。


『ウギャらばあドードー』


魔法陣から逃げたゴブリンは他のゴブリンに指示のようなものを出す。それに対しゴブリンはあるものをこちらに運びだした。


『それは非道だね』


アダムがそう呟くほどのゴブリンたちの行動、なんとボロボロになった女性を複数人運んできたからだ


『うぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃ』


ゴブリンたちは女性を人質にとった。


『なるほど考えたね、その人を人質にとりますので魔法を止めてくださいお願いします、ね』


不適な顔のゴブリン。人質作戦は通用したかに見えた、しかし


『けど残念』


アダムは魔法陣からのレーザーを止めない。そのままゴブリンたちをグサグサにする。


『ウギャバッ!?』


予想外と言うかマジかっ!と思ったゴブリンたちは思わず女性を放して魔法陣から離れる。あの全裸野郎、同族たる人間のメスを躊躇なくやりやがった、そう思ったゴブリンたちだが


『ウブベあ?』


なんとレーザーを受けた女性たちの身体は傷つくどころか肉体が回復したのだ。


『敵にはダメージを、しかし救うべき者には救済を、これが神である僕のチカラ。』


またしても独特なポーズをとるアダム。するとアダム降り注ぐレーザーの一本を手に掴んだ。レーザーの形状はみるみる剣へと変わる


『さぁ、断罪の時間だよ』


そのままアダムはゴブリンたちを剣で蹴散らす。


『アーハッハァ!派手にやってんなぁ!!』


そこに桃太郎が登場する。そしてもの凄い踏み込みで一気にアダムの所まで飛ぶ


(コイツ、動きがまるで素人じゃない!?)


これにはアダムも驚く。桃太郎が通り過ぎた場所にいたゴブリンたちは一斉に地面から投げ飛ばされる。


『それそれそれそれそれぃ!ゴブリンの殺し屋爆誕だぁああアーハッハ!!』


なんとまぁ楽しそうにゴブリンたちをザクザク斬りまくる桃太郎。


『とてもじゃないがEランクとは思えない強さだ、というかあの刀初期装備の弱小の刀...いやそれらもだがそこじゃない、笑ってる、笑ってやがるなアイツ...イカれているのか』


Sランク冒険者のアダムがそう思えるくらいには桃寺桃太郎が尋常ではないということだ。アダムでさえも戦いには緊張感がある、しかしあの桃太郎にはそういうのはまるで無いかのようだった。


次々とゴブリンたちを切り捨てて無双していく桃太郎、戦慄するアダム。もう40は斬っただろうか


『グルゲギャビャビャポぅ!?』


騒ぎを聞きつけて向こうから体格のデカいゴブリンが現れた。桃太郎の3倍はある大きさだ


『ジャイアントゴブリンだ、たとえ君だとしてもそいつには勝てないっ!』


桃太郎の戦闘の狂気に押されながらもアダムがそう忠告する。


『アーハッハァ!ジャイアンがなんぼのもんじゃ!!』


瞬時に状況を理解したのかジャイアントゴブリンは手に持つ斧を桃太郎に落とす。  


しかし桃太郎はサイドに躱す。そしてゴブリンの大きな腹に隼のごとく過ぎ去る一閃をおみまいした。


『グギャロぅっ!』


腹を裂かれたゴブリンはそのまま倒れた。


『アーハッハァ!ジャイアントゴブリン踏破だ踏破、ぶった斬られただぁあアーハッハ!!』


ゴブリンの上に立ち高笑いする桃太郎。無傷の勝利。喜ぶ顔に突き上げる刀はもはや悪人のそれ、主人公とは思えない言動だ。


『バトルジャンキーってよりもはや快楽殺人鬼だね君、なんていうか怖いわ...』


アダムは冷静に呆れる。

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