第5話 小鬼退治withネ申す
ゴブリン-Eランクモンスターで個だとそこまで強くないが集団だとその真価を発揮する。狡猾で残忍な奴らで敵を倒すことに手段を選ばない。
『アーハッハァ!ここがゴブリンの巣窟か』
あまり日の光が差さないじめじめとした所だ。ゴブリンでなくとも何かモンスターは住んでそうな洞穴。不気味な雰囲気を醸し出す
『うえ〜ここなんかキモいじゃあ』
『美しくないね〜、品がないとこゴブリンらしくて嫌いではないけど』
股間に葉っぱ一丁のアダム。後ろには彼のパーティメンバーと思われる女の子がいる。
『ゴブリンごとき僕ら2人で十分さ』
『心が躍るぜ』
桃太郎が意気込むとキジコの方を向いた。
『おい女神、まずおまえから中に入れ。』
『はぁ、ワシぃ!?』
キジコは驚いてしまう。
『そうだ。先程も言ったが、おまえには戦いにおいて物怖じしない心が必要だ。ゴブリンの群れに突っ込むがいい』
『絶対やじゃ!お主ゴブリンの習性知っておるか、奴らは性欲が高く他の種族のメスでも見境なく襲ってくる、つまりおなごであるワシを陵辱するに違いない、絶対危険じゃあ無理無理無理』
『ほう、ラノベ通りのゴブリン設定か。とすると洞窟内には捕えられた女がうじゃうじゃいるかもなぁ』
『うじゃうじゃって言い方...』
『依頼内容はゴブリンに誘拐された女の子たちを救出し、ゴブリンらを殲滅させること。Dランククエストとあるがゴブリンたちの動き次第でC以上の難易度にもなり得るよ』
アダムが桃太郎らに語る
『そいつは面白い。たとえゴブリンでも舐めてかかれないってことだな』
桃太郎が自信満々に言う
『君今日はじめて冒険者登録したばかりのEランクなのにどこからその自信が湧くんだい』
アダムが少し嘲る。しかし桃太郎はそんなこと微塵も気にしていない。
『おいアダム、先に洞窟に入るのはこいつ、キジコだ。教育の一貫で先に入れようと思う。』
『君、女の子の扱いがなってないね』
『知るか。それにこいつは女神様だ、俺なんかよりも位も実力も高いぞぉ』
イヤミまじりで桃太郎はそう言う。
ムカッ
『へぇ〜この子女神だったんだ〜、まぁ冗談だと思うけど君にとっては女神なんだろうねぇ。いっしょにいるしもしかしてカップル?』
ムカムカッ
『まさか。こんな心も身体も汚そうな女、彼女にするとでも思うか』
ムカムカムカッ!
舐められてる、完全に舐められてる。ワシは女神だというのにクソ雑魚呼ばわり、本物の神なのに偽者の神に冗談って言われた...頭きた
『舐めんじゃないわ!やってやるわゴブリンくらいぃぃぃいぃぃい!!』
そう言うとキジコは真っ先に洞穴に入った。
『いいぞ、その意気だ女神!!』
桃太郎がキジコに叫ぶ
『煽れば尊し、なんつってね』
アダムがそう呟く。おもんな
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
『あぁクソっ、アイツら好き勝手いいよって』
指先から炎を灯し暗い洞窟をズカズカ歩くキジコ。怒りのせいか恐怖心がどこかに消えている。
歩く音が空間にこだまする。空気が湿っている、そして暗い。いつどこからゴブリンが出てきてもおかしくない。
(絶対見返してやる、ワシTUEEEEかましてやる)
女神がそう思うと
『う、うぅぅウゥぅうぅぅ...』
どこからか声がする。かなり低い声だ
『まさか、ゴブリン...いやそれにしても苦しそうな...』
キジコは炎を大きくして恐る恐る声のする方向へ近づく。東の方から音がする
『というか後ろの奴らは何しとるんじゃ、腹立つぅぅ』
そう言いながらもキジコは声のする方向へ一歩一歩と足を進める。
『誰じゃお主は!?』
炎を声の主にかまえる。炎の明かりで声の主の姿をハッキリと見ることができた。
『か、かぁ...』
痩せ細った女性だ。まるでゾンビのように痩せている。キジコもなんとなく声の主の正体をわかっていたがこれほどまで衰弱しているとは
『おいお主、しっかり、しっかりするのじゃ!』
炎魔法を展開しつつキジコは回復魔法を女性にかける。
『ウギャキィいぃぃイイ』
すると向こうから3匹ほどのゴブリンが現れる。武装していていかにもこちらを狙っている。
『お前たちか、お前たちがこの人を...』
キジコは少しずつ迫るゴブリンを睨む。しかし女性の回復と明かりの炎で手が塞がっている。
『ウギャキィアァァア』
舌をべろんべろんしながら迫るゴブリン。キジコの怒りは桃太郎らからゴブリンへと移行した。
しかし
(なぜじゃ、なぜワシの体はこんなに...)
キジコの身体は震えていた。見ず知らずの他人だがこうも衰弱し切った姿にしたゴブリンのことが許せないはずなのに、何故か前に進めない、戦えない。
(両手が塞がってるから動けないのか、いや違う。明らかにワシが、ワシの身体が戦いを拒絶しておる...強姦魔のときは迷わず魔法を放てたのになぜじゃ)
キジコは恐れをなしていた。しかしそんなことはお構いなしにゴブリンがキジコらを襲う。
『うぎょラァあーァァア!』
(どうしたワシの身体、動け動け動け)
振り落とされる小斧を目前にして、キジコは必死に身体を動かすことを考える
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