第3話 雉が仲間になった?
『思いのほか無事のようだなぁ女神』
跪くキジコを見下ろす桃太郎。
(ぐぬぬ、くそうぜぇ...けど、)
キジコは立ち上がると桃太郎に頭を下げた。
『あのーそのー、助けてくれて、ありがとうなのじゃ...』
悔しさまじりにキジコは感謝する。
(わかっていたが桃寺桃太郎、ちゃんと強い、デタラメに強い。奴らを傷つけることなく服と武器を全て斬る器用さは、桃寺の持つセンスなのかもしれん)
『勘違いするな、はなからあの男たちは俺の試し切り相手だ。それに女神が魔法使えるとか言ってたからその実力を見ておきたかっただけだ。クソ雑魚だということがわかった。』
(ぐ、くそ雑魚とは...)
『あと女神、ついでに買っておいたから受け取れ』
そういうと桃太郎は何かをキジコに手渡しした
『これは』
女性用の服だった。キジコが着ている服と似たようなデザインだ。
『桃寺、お主...』
『交換条件だ、確かにおまえはクソ雑魚だがたった一回だけ男を吹っ飛ばした時があったろ、つまりあれは延びしろはあると言うことだ。おまえが言っていた通り多量の魔力と多様の魔法を持ち合わせている。
おもしろい、おまえを連れていけばワンチャンとんでもなく強い魔法使いになるかもしれないからなぁ、ならんかもしれない。
いずれにせよその服は俺の仲間になるためのギブ&テイクだ。俺に着いていけば身の安全は保障しよう』
『...』
桃寺桃太郎は控えめにいっても非常識で不謹慎でヤバいやつじゃ。敬語も使わんし異世界に行くためにあらゆる手段を使うし、襲われている私を放って買い物まで行く始末、
しかしそんな彼にも案外人間的なところがあると思い知った。現にワシを助けてくれたし、なにより異世界への行き際に“ありがとう“って感謝してた。今だって服もくれたし。
桃寺桃太郎、思想や行動がぶっ飛んでるだけで、本当はいい奴なんじゃないか。
それはそれとして、
『ところでお主何やっとるんじゃあぁぁあァァ!!』
突如桃太郎にキックをお見舞いするキジコ。直撃した桃太郎。
『なんだいきなり』
『おーぬーし、なに平然と金貨200枚使っとるんじゃぁあ!!』
『別にいいだろ、金貨200枚程度』
『よくないわアホ!全財産ぞ、神がお主に与えた金貨200枚をよくも一瞬で溶かしたな、逆にすげぇは尊敬もんじゃ!』
『200枚ってそんな凄いのか、』
『200枚あれば一年は無職生活できるわぁあぁぁ
ぁぁあ!しかしもう一文無しじゃあぁぁぁあぁぁぁああぁぁぁあ』
桃太郎の身体をぽこぽこするキジコ。
『うるさいな女神。それに別に問題はない、モンスターを狩って金にすればいいだけだ』
『そういう問題じゃねーわ、金銭感覚がバグってることに異議申したててんのじゃ!やっぱりお主は愚者じゃ、グシャグシャの愚者じゃあ』
女神キジコは再び号泣する。
そんな主人公らしからぬぶっ飛んだ桃寺桃太郎であるが、これは彼が真の主人公になるまでの物語。一癖も二癖もある冒険者たちの異世界生活が始まる。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
鬼ヶ島本丸
『音がする、この世界の者でない者の魂の音がする。いい音色だ、いやすごく汚い音色かもしれない。』
色気のある男が和風な寝室で独り語る
『実に野蛮で強い魂、楽観的で物騒な奴が舞い降りた...嗚呼これは楽しみだ。』
不適な笑みを浮かべながら夜天を望む。
鳴る神鳴る鳴る鬼ヶ島、紅の花弁に藍の大地、鬼顔の山麓には天にも昇る天守閣。風雲を纏い邪気を巡らせ、永久の不落を叶わんとするその巨城は今宵もまた唸る挑戦者を静かに待つ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます