03 謎
けれども、野洲は死んではいなかった。
相変わらず携帯は繋がらなかったが、天文台の電話システムには異常がなかったので、その一件の直後、慎二とるう子は北羅瀬天文台から地元の警察に連絡を入れた。どう説明したらいいのか見当がつかなかったので、自分たちが見たありのままを述べた。一時間近く経ってから警官三人がランドクルーザーのパトカーに乗ってやってきた。そのとき救急車に乗って一緒に駆けつけた医師が野洲の状態を一時の心不全と機能不全と判断し、意識の回復を待たずに病院に送った。
その少し前――
るう子は気が進まなかったが、警察が到着するまでの間、慎二が天文台の中を調べると主張するので、しかたなく彼のあとについていくつかの部屋をまわった。その結果、二つの部屋――電算機室と信号解析室――で四人の死体を発見した。天文台を尋ねた当初の目的――宇宙ノイズ――のことは二人ともすっかり忘れていた。
「……で、実際のところ、何が起こったんだね」
現場検証の後、その場で改めて二人から事情を聞くことにした年配の警官はいった。恰幅が良く頼りがいのありそうな警官だった。
けれども――
「さっきいったこと以外、ぼくたちにもさっぱりわけがわからないんです」
警官の質問に、慎二は正直に答えた。それ以外の答えが思いつかなかったからだ。
「では、そちらのお嬢さんのご意見は?」
「わたしも彼と同じです」
るう子も慎二と同じ答えを返すしかなかった。
(でも……)
と、るう子は思った。
(前原くんの電話によると、野洲さんは『今日、セミナーがある』といったはずだわ。なのに、わたしたちが天文台で見つけたのは、野洲さんを含めて五人。とすると、あとの人たちは、いったい何処へいってしまったのかしら……)
国立北羅瀬天文台は、関係者の健康回復を待ち、何らかの事件の手がかりが得られるまで一時立入禁止となった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます